2015.5.26

WorMo’的ワークスタイル

ママと企業、クリエイターが子育てを考える

リビングラボレポート@東成区子ども・子育てプラザ

2015年4月20日、大阪市の東成区子ども・子育てプラザで、「子育てママ Living LAB 子育てアイデアソン〜子育てママと企業、クリエイターが一緒に考える子育てのアイデア」が行われ、WorMo’編集部もママたちの課題やアイデアを引き出すファシリテーターとして参加しました。
アイデアソンとは「アイデア+マラソン」の造語で、テーマについてアイデアを出し合い、それをまとめていく形式のイベントのことです。
今回は20名の子育て中のママと12名の行政・企業とクリエイターの方たちが集まり、子育てにおける課題抽出とそれを解決するためのアイデアを一緒に考えました。

『子育てママ Living LAB 子育てアイデアソン』
主催:ソーシャルビジネスデザイン研究所
共催:東成区社会福祉協議会
協力:コクヨ株式会社/株式会社コンセント/大阪イノベーションハブ 東成区役所

子育てママにはじぶんの時間がない
もしも、家にロボットがきたら…
1日の中で、子育て中のママがじぶんのために使える時間帯は21時~24時というアンケート結果があります。でも同時に、こどもが起きている時間はこどもとの触れ合いを大切にしたいと、こどもが寝ている間に残った家事をしているママも多く、結果、じぶんのために使えるはずの21時~24時も家事をしていることがアンケート結果からみえてきました。そんな、じぶんの時間をつくることが難しい子育て中のママのサポート役として、もしも、家に人型ロボットがきたら、ママの毎日はどう変わるのでしょう?
ロボットと家事を分担する
未来を想像してみよう!
今回、子育て中のママの課題抽出のために設定したテーマは「もしも、家にロボットがきたら…」。簡単な会話や接客ができるロボットが続々と誕生する中、人型ロボットが家事や育児をする日は、遠い未来のことではないかもしれません。
まずは、集まった20名のママが、「ラクしたい家事は何か?」「空いた時間でやりたいことは?」「どんな時間を大切にしたいか?」を見つけることから始め、日々の生活を振返りながら、現状・課題を1人ひとり付箋に書いていきます。そこから「ロボットに任せたいことは?」「任せたくないことは?」をテーマに、さらにトピックを掘り下げていきました。基本的に、ロボットはどんなことでもできるという設定にすることで、「家事や育児との関わりをどこまでロボットに任せられるか」がディスカッションの大きな論点となりました。
ロボットに任せたいこと
任せたくないことは?
「ロボットに任せたいこと」については大きく、「掃除・片付け」「料理」「買い物・その他」「こどものこと」の4つのテーマに分類されました。
「ロボットに任せたいこと」を書いた付箋をホワイトボードに貼り出し、分類していきました。
ママたちは、それぞれ興味のあるテーマに分かれてディスカッション。グループごとに意見をまとめ、ロボットに「任せたいこと」「任せたくないこと」の発表をしました。
掃除・片付け
任せたいこと
  • 掃除は特に、チカラ仕事をしてほしい
  • 部屋、冷蔵庫、ベランダや外回りなどの掃除
  • いらないものを捨てる、捨てるものと捨てないものを設定できる機能がほしい
任せたくないこと
  • おもちゃの片付けは、こどもに教えながらやりたい
料理
任せたいこと
  • 食事の献立を考えてほしい
  • いま冷蔵庫にある食材からメニューを考えてもらいたい
  • 食材の賞味期限の管理
  • 賞味期限の管理を踏まえたうえでのお買い物と献立の提案
  • 朝食のコーヒーを美味しく淹れてほしい
  • お米を炊くなど、簡単な調理
任せたくないこと
  • こどもには家庭の味を覚えてほしいので味付けは自分でやりたい
買い物・その他
任せたいこと
  • 毎日の買い物、特に重い荷物や雨の日は助けてほしい
  • 買い物の道中、こどもを危険から守ってほしい
  • 買い物中のこどもの相手、子守りをしてもらうことで、買い物に集中したい
  • スーパーの食材で、こどもに食育をしてほしい
こどものこと
任せたいこと
  • こどもとの時間をつくるために家事は分担したい
  • お風呂、ハミガキなど、こどもの身の回りのサポート
  • オムツ替えの補助
任せたくないこと
  • 基本的にこどもの世話は親自身でしたいので、人によって、日によって、サポートしてほしいことが変わってくると思う
  • たとえばロボットに遊び相手になってもらう場合でも、ママも一緒に参加したい
このように各テーマから、さまざまな意見が出ました。教育的な役割、家事全般や育児のサポートを求める意見がある反面、料理の味付けやこどものしつけなどは、じぶんでしたいと思うママはたくさんいるようです。子育て中のママたちの“母親としての想い”を知ることができました。
子育てママの現状を知り
見つめ直そう
アイデアソンは後半に。ここから企業や行政、クリエイターたちがグループワークに加わり、前半でママたちから出た「ロボットに任せたいこと、任せたくないこと」から課題を抽出し、それを解決するための商品やサービスを考えていきます。
まずは、ママたちが普段思っていることや感じていることをカスタマージャーニーマップというサービスデザイン手法を使って、「1日の過ごし方」「1日の気持ちの変化」「できるなら、したいことは?」といった切り口で聞き取り、図に起こすことから始まりました。普段なにげなく思っていることを課題として改めて考えることで、その本質やじぶん自身の本当の想いに気づき、それをカスタマージャーニーマップに反映していきました。
カスタマージャーニーマップでわかったことは、子育て中のママたちの1日は、やはりこども中心であること。炊事や洗濯、掃除や買い物など、朝起きてからこどもを寝かしつけるまで休むヒマはありません。1日の気持ちの移り変わりも、こども次第。総じて、こどもと一緒に遊んでいるとき、こどもが寝ているとき、手がかからないときに、ママのテンションは上がるようです。反対に、こどもがいうことを聞かないとき、家事や掃除をするとき、献立を考えるときなどはわずらわしいと思う傾向が高いようです。さらに「できるなら、したいことは?」という項目には、エクササイズや美容、ショッピングなど、“ひとりの時間を過ごしたい”という声が多く挙がりました。
のべ3時間に及ぶ子育て中のママたちのグループワークはここで終了。この後、企業や行政、クリエイターによる、課題解決のためのサービスや商品を考えるグループワークへと進みました。
子育てママが抱える
本当の課題とは
カスタマージャーニーマップからは、子育て中のママが日々どんな気持ちで過ごし、家事・育児をこなしているかを知ることができました。次のグループワークでは先ほどのカスタマージャーニーマップをベースに、企業や行政、クリエイターの方たちが客観的な視点で見た“子育てママたちの1日の行動や気持ちに潜む「本当はイヤなこと」「こうだったらいいのに!という願望」”といった課題抽出のための着目点をディスカッションしながら見つけ、グループごとに発表しました。
《グループA》
こどもたち優先で、じぶんの時間がない。そんな子育て中のママのストレスや疲れをとり、モチベーションを上げることはできないだろうか? このチームでヒアリングしたのは2歳半までのママたち。彼女たちの苦労をあまりパートナーが理解していないと感じたので、その問題も解消できればと思う。
《グループB》
サポートしてほしいという声が多いことに着目。いちばんのサポーターであるはずのパートナーが、都合の良い時間に帰ってこないことが原因ではないか? パートナーは良かれと思って早く帰っても、逆にこどもが喜んで寝ないときもある。そんなミスマッチをなくすための情報交換ができないか? お互いにしてほしいことなどが連絡できる、夫婦間の連絡アプリを考えたい。
《グループC》
こどもが寝るとママのテンションが上がる。起きるとテンションが下がるという意見があったが、それは果たして本当の気持ちだろうか? こどもと過ごす時間が一番長い母親が、こどもの安全に対する最終責任者となっている家庭が多く、母親はサッカーで言えばゴールキーパーのような存在。その責任というボールをパスできないことに問題があると感じた。子育てにノウハウやパターンはなく、母親にしかないデータの蓄積がある。それを他の家族にシェアできる仕組みはどうだろうか。また、昼間は子育てに追われているので、夜中にインターネットで買い物をするという声もあった。それを支援する方法も探ってみたい。
《グループD》
1日の流れの中で、子育て中のママの場合、分刻みで過ごしていることがわかった。その中でも、ゆっくり化粧をしたい、外食を楽しみたいという意見が多く、「空いた時間を見つけて何かがしたい!」というニーズがあると思う。子育てや家事のタスク管理に縛られることから開放してあげる必要があると感じた。こどもに「早くしなさい!」と言わなければいけない状況は、母親にとっても辛いことだと思う。ママたちが、もっとバラエティに富んだこどもへの声かけができるように、遊びで何かできないか? またその遊びを通じて、ママのタスクを誰かと分担し、空き時間が増えるような解決策を見つけたい。
第三者から見た客観的な視点で、子育て中のママが普段の生活で抱える課題の本質が見えてきました。ここからはいよいよ、解決すべき課題を決め、その解決策となるサービスや商品の提案へと移っていきました。
子育てママの声を
新しいサービスや商品につなげよう!
のべ7時間にも及んだアイデアソンもいよいよ大詰め。最後のワークでは、グループごとに、子育て中のママたちの課題解決のための商品やサービス、それを売り出すためのキャッチコピーやビジネスモデルなどを考え、プレゼンテーションしました。
《グループA》
商品・サービス: 「パパママ共有アプリ“ピース”」
相手に連絡しなくても、して欲しいタスクを共有できるアプリケーション。タスクはYesまたはNoを選択でき、タスクを完了するとポイントが与えられ、ポイントの総数がランキング化される。
課題:パートナーと一緒に子育てをする環境づくりができていない
解決できる問題やメリット:夫婦間のコミュニケーションが深まる。
パートナーの家庭への関心が深まる。ママのストレス軽減。
《グループB》
商品・サービス: 「夫と妻の共感アプリ」
夫婦間でタスク管理ができる。連絡もでき、妻の女性的な要望を夫にもわかるように、夫の男性的な意見を妻にもわかるように自動翻訳。また内容によって絵文字が自動的につくなど文面作成をサポートする。アプリケーション内で、飲み会帰りのお土産や家事の悩みなどを同性のユーザー同士が情報交換できる。
課題:夫に頼んだことが実行されないこと
解決できる問題やメリット:夫婦の身近な生活ストレスを軽減。
夫婦間のコミュニケーションが円滑に。夫、妻、それぞれの大変さを共感できる。
《グループC》
商品・サービス: 「いきなりリビング伝説—さかなつったどー!!—」
ARの技術を使って、自宅でこどもが魚釣りを疑似体験できる。
釣った魚のデータがわかり、その日の内に釣ったものと同じ魚が届く。
課題: こどものいない時間に、インターネットでものを買う
解決できる問題やメリット:献立を考えずに済み、買い物をする手間が省ける。こどもに食育ができる。こどもが釣った魚を囲んで、家庭内のコミュニケーションも深まる。
《グループD》
商品・サービス: 「インタラクティブコミュ絵本」
こどもがひとりで遊びを発見し、学べるアプリケーション。ママのスマートフォンから遠隔操作ができ、こどもに見せたいコンテンツを選べる。スマホのインカメラと連携して、離れていてもこどもの様子がわかる。
課題: こどもに手がかかって、家事ができない
解決できる問題やメリット:育児と家事を同時にできる。育児とストレスの軽減。ママがいなくても、こどもが楽しく遊べる。
7時間に及んだ今回のアイデアソンでは、 「ビジネスモデルキャンバス」というツールを用いて、サービスアイデアを、簡単な事業計画レベルまで掘り下げて考えました。
このアイデアをさらにブラッシュアップさせていけば、忙しい子育て中のママたちにとって本当に役立つ商品になるのではないでしょうか。今回のように、課題の抽出を繰り返し、掘り下げていくことで、ママ本人では気づけなかった本質的な問題も見えてきました。課題を抱えている当事者と、企業やクリエイターが共創するからこそ、本当に必要な解決策を導くことができるのではないでしょうか。
子育て中のママたちが抱える課題はまだまだ山積みです。ママのサポート役として人型ロボットが家にやってくる日も、子育て中のママの声からサービスや商品が生まれる日も、もうすぐかもしれません。

文/田中陽太 撮影/出口コウ介