2014.7.18

WorMo’的ワークスタイル

夫が考えるべき仕事と育児の両立とは?

セミナー報告3 子育て世代を活かすチーム戦略

「子育て世代を活かすチーム戦略」をテーマに、夫、妻、そして職場の上司や同僚と、それぞれの立場から働き方や生き方について考えていく本セミナー。第3回目の視点は、“夫”。仕事と育児の両立を軸とした共働き夫婦のキャリアプランについて、東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部シニアコンサルタントでNPOファザーリング・ジャパン理事の塚越学さんが講演を行った。講演ならびにワークショップの様子をレポートする。

家族やパートナーと共に成長していく“育キャリ”
周囲を含めたワークライフマネジメントが重要
今回の参加者の半数ほどが、0~2歳の子どものいる男性。それ以上の年齢の子どものいる男性や管理職の男性のほか、会場には女性の姿も多数見られた。講演者の塚越さん自身も、6歳、3歳、0歳の3人の男の子の父親。自身のプロフィールと現職につくまでの経緯を紹介し、講演は始まった。
まずは、「ワタシの家事育児分担度シート」を使った個人ワークで、それぞれの家庭における妻と夫の家事・育児の分担の現状を振り返り、グループごとに共有した。塚越さんは、平成24年度東京都生活基本調査の結果を提示し、男性の家事・育児参加率の低さを指摘したが、本セミナーに参加するだけあり、男性参加者の家事・育児レベルは比較的高かったようだ。
続いて塚越さんは、ファザーリング・ジャパンが『新しいパパの働き方』(学研教育出版)で提唱している“育キャリ”について紹介した。“育キャリ”とは、自分一人だけでなく、子どもやパートナーといっしょに成長していくキャリアのあり方。上昇志向パパ、家庭志向パパ、柔軟志向パパ、の3つのタイプに分類されるが、いずれのタイプも、「仕事か家庭か」という二者択一ではなく「仕事も家庭も」充実させるという点で共通している。
この“育キャリ”を夫婦で実現していくための施策を考えるのが、今回のセミナーの目的だ。塚越さんは、「“育キャリ”やワークライフバランスを実現するためのマネジメント(ワークライフマネジメント)のカギは、自分だけでなく、パートナーである妻、会社の上司や同僚など、周りの人を巻き込むことにあります。自分のワークとライフだけではなく、周囲の人のワークとライフまでマネジメントする必要があるのです」と述べた。

乳幼児期の夫の家事・育児参加率が夫婦の未来を決める
続いて、男性の子育ての悩みと問題点へと話題は移る。悩みは大きく分けて次の3つ。
  • 仕事が忙しくて育児時間がとれない。
  • 子どもとどう向き合えばよいかわからない。
  • 子どもが生まれてから夫婦関係が悪化した。
1の原因は、なんといっても日本社会にはびこる長時間労働問題だ。労働時間は長いものの、労働生産性はOECDの先進国7カ国中最下位だ。この問題解決のためには、自分自身の働き方を変えるだけでなく、会社が組織として働き方改革に乗り出す必要があると、塚越さんは訴える。
2については、子どもとのコミュニケーションツールのヒントとして、ファザーリング・ジャパンで推奨している、絵本、パパごはん、バルーンアートを紹介した。
3の大きな要因は、夫が出産前後の妻の心身の変化を理解しないこと、そして、夫の育児・家事への参加率の低さだ。「妻から夫への愛情曲線は、子どもが乳幼児期に夫がどれだけ家事・育児に参加したかで決まる」というデータを提示しながら、塚越さんは夫の家事・育児への参加がいかに重要かを強調した。
夫婦で協力し、夫も妻もキャリアアップする
パートナーと家事・育児をシェアするためには?
続いて、「パートナーの不満・不安レベル対策 共働き夫婦編」と題して、パートナーと家事・育児をシェアするための5つの課題と解決のヒントが提示された。
レベル1.
妻の不満:私も働いているのに、なんで育児も家事も私だけ?
対策例:翌週1週間分のメニューを夫婦で考える。 長時間労働から定時間労働に切り替える。
→時間が許す限り、とにかく子どもに愛情を注ぎまくれ!
レベル2.
妻の不満:イクメンって育児だけ? 家事は私だけ?
対策例:時間節約の最新家電、ネットスーパーを活用する。 お互いのやり方を尊重する(×口出し・ダメ出し・手出し)
→とにかく感謝! やられたらやり返す、倍感謝だ!
レベル3.
妻の不満:夜の予定を勝手に入れないで。
対策例:Googleカレンダーなどで家族のスケジュールを共有する。
→できなかったことを数えない。できたことを褒め合おう。
レベル4.
妻の不満:保育園の送りだけじゃなく迎えもやって。
対策例:会社で「定時帰宅宣言」をする。
→電動自転車は通勤ストレス解消の必勝アイテム!
レベル5.
妻の不満:子どもの病気は私だけが対応
対策例:“3D(どうしても ダメな Day)カレンダー”で予定をシェア。施設型病時保育ではなく訪問型病時保育を利用する。
→保育園の第一連絡先にはパパを登録しよう。
 
出世するママの影にイクメンの夫あり!
塚越さんがくり返し訴えるのが、企業や社会の変革の重要性だ。時代による父親像や家族像、育児への意識の変遷をたどり、「今は社会構造変革の過渡期にある」と述べる。
「いわゆる“イクメン”“カジメン”が増え、仕事をする女性が増えてきている印象があるかもしれませんが、現在でも、結婚や出産を機に女性の約6割が離職しています。この状況は、1985年から変わっていません。働く女性の離職防止や再就職の支援は、夫の家事・育児参加率にかかっているのです」
さらに塚越さんは、「出世するママの影にイクメンの夫あり」と言う。
「夫婦で協力しながら、夫も妻もキャリアアップをしていくのが、“育キャリ”の重要なポイントです。たとえば、妻が今年がんばれば昇進できるかもしれない、という年には、夫は家事・育児を多めに負担して、妻が仕事に専念できるようサポートする。もちろん、逆もありえますよね。夫婦がそれぞれ自分のキャリアだけを考えていては、衝突の原因になってしまいます」
子育ては期間限定のプラチナチケット
仕事と育児・家事の両立、ワークライフバランス、そして“育キャリ”。これらを考えるうえで基準となるのが、「自分にとっての優先順位は何か」ということだと塚越さんは言う。
「社会の基本は家族、仕事の基盤も家族。職場にあなたの代わりはいても、パパとしてのあなたの代わりはいません。転職して会社は替えられても、家族は替えられませんよね。そして、会社があなたを見捨てても、家族は決してあなたを見捨てません。すると自ずと、優先すべきことが見えてきますよね」
最後に塚越さんは、ファザーリング・ジャパンがうたう「子育ては期間限定のプラチナチケット」という言葉を挙げて、こう締めくくった。
「子どもはいつか巣立ちます。再び夫婦二人に戻ったときに、二人の関係性もお互いのキャリアも含めて、どうなっていたいか。一度、考えてみてください。今は仕事に育児に大変だと思いますが、育児ができるのは今だけです。楽しまなきゃもったいない。パートナーとしっかりとコミュニケーションをとり、思いを共有しながら、お互いのキャリアも伸ばしていく。楽しそうに笑っているパパとママをいっしょに目指していきましょう」
“育キャリ”について考えるワークショップ
気づきとアクションを全員で共有
講演に続き、塚越さんを交えて“育キャリ”について考えるワークショップが開催された。参加者は数名ずつのグループに分かれ、下記の3つのテーマについて、意見を交わし合った。
講演を通して“育キャリ”についてどんな気づきがあったか
“育キャリ”を実現するための課題は何か(会社・上司の課題/家庭内の課題)
理想の“育キャリ”実現に向けて明日から自分ができるアクションは何か
参加者はそれぞれのテーマについて自分の気づきや課題を付箋に書き出し、メンバーで話し合いながら模造紙にグルーピングしていく。それぞれが抱える課題や思いを交わし合い、どのグループも大いに盛り上がった。さらに、各グループで話し合った内容を代表者が発表し、参加者全員で共有した。
ワークショップの最後には、3つ目のテーマ「明日からできるアクション」を参加者一人ひとりが付箋に書き、全員分を貼り出して共有した。
「思ったことは言葉で伝える。『ありがとう』と言う」
「一日一つずつ、どんな家族になりたいか考えて書く」
「会社の男性社員に“育キャリ”を意識させる」
「妻の話を心をこめて聞く」
など、次々と具体的なアクションが提示された。
なかでも多かったのが、「パートナーと話し合う」というもの。仕事や家事・育児で忙しい子育て世代にとっては、パートナーとしっかりと向き合い、話し合う時間を持つのは難しい。このセミナーをきっかけに、自分の思いを伝えること、相手の考えを聞くこと、そして、二人で理想の家族像、キャリア像を描いていくことの大切さに、改めて気づいた参加者が多かったようだ。
こうして、夫の立場から夫婦の“育キャリ”を考える第3回目のセミナーは、大盛況のうちに幕を閉じた。
【今後の予定】子育て世代を活かすチーム戦略セミナー
第4回 2014年8月3日(日)13:00-15:30
『子育て世代を活かしてチーム力を高める働き方ワークショップ』
夫、妻、上司、色々な立場から育児と仕事を両立させる働き方、既存組織で実現する上での課題、ファーストステップを考える
【レポート】子育て世代を活かすチーム戦略セミナー
第1回 2014年7月3日(木)19:00-21:30
『妊娠?! 育休?! 時短勤務?! 多様な働き方が増える今、チーム力を上げるイクボスとは』
チームで共に働くメンバーのキャリアとプライベートを応援しながらチーム力を上げる。自らも仕事と私生活を楽しむリーダーになるには?
第2回 2014年7月12日(土)13:00-15:30
『出産、子育てというライフイベントをプラスに変える、ワーキングマザーが知っておくべき処世術』
働く女性が出産、産休、仕事と育児の両立のために準備すべきこと

文・撮影/笹原風花