2014.7.15

WorMo’的ワークスタイル

ワーキングマザーが知っておくべき処世術

セミナー報告2 子育て世代を活かすチーム戦略

「子育て世代を活かすチーム戦略」をテーマに、夫、妻、そして職場の上司や同僚と、それぞれの立場から働き方や生き方について考えていく本セミナー。第2回目の視点は、“ワーキングマザー”。出産・子育てというライフイベントをプラスに変えるための働く女性の処世術について、育休後コンサルタントの山口理栄さんの講演を開催。講演ならびにワークショップの様子をレポートする。

職場復帰前に女性がやっておくべきことは?
働き方や育児への考え方をゼロに戻す
今回の参加者の多くは、ワーキングマザー、もしくは将来的にワーキングマザーになる立場にある女性たち。山口さんは講演の冒頭で、「母親が働くことや長時間保育が子どもの発達に与える影響は、そうではない場合と差がない」という学術的研究結果をいくつか紹介し、参加者の仕事を続けることに対する迷いや不安を払拭した。
続いて、話題は仕事と育児の両立へと移る。出産前の仕事を100とし、育休中の育児を100とすると、職場復帰後は100+100で200をこなそうと思いがちだが、それでは必ず破綻してしまうと山口さんは警告する。
「職場復帰にあたりまず大切なのは、働き方や育児への取り組み方をゼロベースで再構築することです。200を目指している限り、“仕事と育児が両立できない”というモヤモヤやストレスは永遠に解消しません」
中長期的なキャリアプランを立てる
同時に、キャリアへの意識も変える必要があるという。子どもが成長して育児が落ち着き、また仕事に力を入れられる時期がくる。そのときにしかるべきポジションでしっかりと活躍できるよう、中長期的なキャリアプランを立てること、そして、出産や育児でキャリアにブランクを空けずに踏みとどまる努力をすることが大切だと、山口さんは訴える。
「キャリアを中長期的な目で見ると、仕事は育児が終わってから思う存分できることがわかります。でも、育児は子どもが小さいときにしかできません。後回しにはできないのです。子どもと正面から向き合い、育児に優先的に取り組むことが、仕事と育児を両立するうえでの大前提と考えましょう」
職場復帰前に、必ず上司と面談する
続いて、育休後の職場復帰について、山口さんは復職前面談の重要性を強調
「必ず、上司と面談したうえで復帰すること。会社に面談の制度がなければ、自分から頼んででもしましょう。職場の上司や同僚に、自分の抱える事情を積極的に伝える努力をすることが大切です。子育てを経験していない人はとくに、仕事と育児の両立は何がどう大変なのかが具体的にわからないですから」
さらに、復職前の面談で話し合うべきこととして、山口さんは以下の内容を挙げる。
〈自分から情報提供すべきこと〉
  • 勤務時間、保育園に預ける時間
  • 短時間勤務制度の利用の有無(有の場合、利用期間)
  • 家族などによる協力体制
  • 繁忙時などあらかじめ決めた日に時間外労働ができるかどうか
  • 復職に際しての会社への感謝、仕事への意気込み
  • アサインされた仕事に関する要望や提案
  • 休業中に取得した資格や勉強したこと
  • 子どもの健康状態など伝えておくべきこと
〈上司から聞くべきこと〉
  • 育児休業中の社内の出来事、業績、組織や人の異動、業務プロセスや規則の変更点
  • 上記以外で自分が気づいた職場環境の変化
〈両者で話し合うこと〉
  • 今後担当する仕事の内容、範囲について実現可能と思えるレベルまで具体的に
  • 子どもの病気などで休むことを前提としたバックアップ体制
  • 面談などで上記情報のアップデートを欠かさない
大切なのは、キャリアが一時停滞しても働き続けること
短時間勤務制度は“長く働き続けるための制度”
さらに、育休からの復職後に多くの女性社員が選択する「短時間勤務制度(時短)」について話が及ぶ。山口さんは、制度利用者に求められることとして以下の3つを挙げる。
  • 時短勤務から通常勤務に戻ったときに自分はどうなっていたいかを具体的に描く「中長期的なキャリア展望」
  • 仕事と育児との両立により得られるプラス面の認識と共に、「制度利用に伴うマイナス面の認識」
  • すべてを自分一人で抱え込まず、「育児をパートナーと分担する意識」
「短時間勤務制度は、“休みたい人が長く休むための制度”ではなく、“働きたい人が長く働き続けるための制度”です。自分の将来像を明確に描くこと、そして、それを一人で実現させようとするのではなく、会社やパートナーの協力をうまく得ることが大切なのです」
育休後のキャリアアップに焦りは禁物
さらに山口さんは、会社や職場に対して“貸し借り”の感覚を持つことが重要だと述べる。「子育て中は、社会や周りの人に助けてもらっていいんです。ただし、その“借り”はいつか誰かに還元しましょう。今すぐである必要はありません。会社にも、さまざまな形で返せるものがきっとあるはずです」
この話題のまとめとして、「育休後のキャリアアップや時短勤務後からの管理職昇格は、自分次第で可能。ただし、絶対に焦らないこと」と山口さんはアドバイスする。
「子育てが落ち着き、ここから仕事のアクセルを踏もう、と思ったときには、自分の実年齢から10を引いてください。45歳なら35歳のつもりで。同じ年齢の社員と比べていては、ネガティブな思いしか生まれません。まだ若い、自分のキャリアはこれからなのだという思いで、新たなスタートを切ればいいのです」
 
仕事と育児の両立は、自分ひとりでがんばらない
“育児・家事は自分がやって当然”は捨てる
育休後の仕事と育児の両立のカギを握るのは、パートナーである夫の存在だ。夫婦のパートナーシップについて山口さんは、男性の育児参加への意識が変わりつつある今、女性自身も、「自分が育児・家事をやらなければならない、やって当然」という考え方を改めるべきだと訴えた。
「やはり、パートナーとのコミュニケーションが何よりも重要です。自分の思いを伝えることを決してあきらめず、子どものこと、家のことをきちんと二人で話し合いましょう。ワーキングマザーにとって何よりも頼れる存在は、夫なのですから」
仕事と育児の両立経験は、キャリアの阻害要因ではない
さらに山口さんは、自身のキャリアや育児と仕事との両立経験を例に挙げながら、キャリアの構築について話した。
「働き始めて10年目から20年目頃までのキャリアは、実は“筏下り”なんです。この時期に私たちは、急流に流されながらもさまざまな経験をして、働くうえでの基礎力を身につけ、人や自分、課題との向き合い方を学んでいきます。そして、あるとき転機があり、“筏下り”から“山登り”のキャリアへと転換します。“山”、つまり明確なゴールを見つけ、全エネルギーを投入してその山に登っていくのです。山登りの過程で、専門知識やノウハウが養われます。“山”が見つかる時期は、人それぞれ。まだ見つけていなくても、まったく焦る必要はありません」
*参考文献:大久保幸夫『日本型キャリアデザインの方法』日本型キャリアデザインの方法―「筏下り」を経て「山登り」に至る14章
山口さん自身の転機は、46歳のとき。長年勤めた会社で、女性活躍推進プロジェクトリーダーを務めたことをきっかけに、登るべき“山”を見つけたという。
「仕事と育児の両立経験は、私の今の仕事への大きな糧になっています。育児によりキャリアが一時的に減速することはあっても、トータル的に考えるとまったく阻害要因ではありません。むしろ、プラスになることの方が多いのです」
周りを巻き込み、楽しくゆとりある両立生活を
講演の最後に、山口さんは、育休からの復職後の女性社員の活躍促進のためには、組織全体で社員の多様性の受け入れに取り組む必要があることを強調した。そして、普段から実践できることとして、上司、先輩ママ社員、同世代ママ社員、ーシティー推進担当など、職場でのネットワークづくりを推奨した。
「仕事と育児を両立しようと、女性が一人でがんばる時代ではありません。勤務先の支援制度や保育園、学童保育はもちろん、病時保育などの保育サービス、家事代行サービスも利用しやすくなっていますから、どんどん活用しましょう。インターネットでは、仕事と育児の両立や女性のキャリアアップについての最新情報も得られます。ママ友やパパ友、地域のつながりも大切ですね。そしてなにより、パートナーの協力です。周りを巻き込み、使えるものは活用し、楽しくゆとりのある両立生活を送ってほしいと思います。ママが笑顔でいれば、家族みんなが楽しく過ごせますからね」
 
“育児とキャリア”について考えるワークショップ
明日からできるアクションを発表
講演に続き、山口さんを交えて“育児とキャリア”について考えるワークショップが開催された。参加者は数名ずつのグループに分かれ、下記の3つのテーマについて、意見を交わし合った。
講演を通して・・・
  • “育児とキャリア”についてどんな気づきがあったか
  • “育児とキャリア”を実現するうえでの課題は何か(会社・上司の課題/家庭内の課題)
  • 理想の“育児とキャリア”実現に向けて明日から自分ができるアクションは何か
参加者はそれぞれのテーマについて自分の意見を付箋に書き出し、メンバーで話し合いながら模造紙にグルーピングしていく。それぞれが抱える課題や思いを共有し、話も弾む。
ワークショップの最後には、3つ目のテーマ「明日からできるアクション」を、一人ひとつずつ、リレー形式で発表していった。

「“(育児・家事は)自分がやるべき”という思い込みを捨てる」
「パートナーや職場のメンバーとコミュニケーションをとる」
「復職後のゆとりある両立生活のために、パートナーと話し合う」

など、次々と具体的なアクションが提示された。
「育児も仕事もがんばりたい」という女性が増えている今、中長期的なキャリアや「こうなりたい」という姿を思い描くこと、そして、自分だけががんばって解決しようとしないことが大切だとくり返し伝えた山口さんのメッセージは、参加者の心に深く響いたようだ。こうして、ワーキングマザーを対象にした第2回目のセミナーは、大盛況のうちに幕を閉じた。
【今後の予定】子育て世代を活かすチーム戦略セミナー
第3回 2014年7月15日(火)19:00-21:30
『夫が考えるべき仕事と育児の両立とは?共働き夫婦のキャリアプラン』
子育て中だからとあきらめない、妻のキャリアプランをサポートする方法
第4回 2014年8月3日(日)13:00-15:30
『子育て世代を活かしてチーム力を高める働き方ワークショップ』
夫、妻、上司、色々な立場から育児と仕事を両立させる働き方、既存組織で実現する上での課題、ファーストステップを考える
【レポート】子育て世代を活かすチーム戦略セミナー
第1回 2014年7月3日(木)19:00-21:30
『妊娠?! 育休?! 時短勤務?! 多様な働き方が増える今、チーム力を上げるイクボスとは』
チームで共に働くメンバーのキャリアとプライベートを応援しながらチーム力を上げる。自らも仕事と私生活を楽しむリーダーになるには?

文・撮影/笹原風花