2015.4.15

WorMo’的ワークスタイル

結婚、出産・育児、離婚、すべてが糧に

Vol.17 人生のコンセプトづくりに寄り添う

Cras-i design(クラシデザイン)
ライフコーディネーター(AFP・相続診断士)
波柴 純子 さん
広告代理店で営業ウーマンとして仕事に打ち込んでいたが、妊娠後に退職。シングルマザーになったのをきっかけにファイナンシャルプランナー(FP)の勉強を始め、生命保険会社のFPとして再就職。2013年に独立し、現在は“自分らしい明日の暮らしをデザインする”をコンセプトに、ライフコーディネーターとして幅広く活躍する。12歳女児のワーキングマザー。

インタビューアー/WorMo’編集長
河内律子(4歳児のワーキングマザー)

妊娠を期に退職。離婚を経て
新たな分野に挑戦する
—ファイナンシャル・プランナー(FP)というと、お金はもちろん、数字やデータに強いというイメージがありますが、以前から興味があったのですか?
実は、数字は大の苦手だったんです。お金への興味も強くはなく、家計簿なんてつけたこともなくて…。でも、妊娠がわかって退職して、その後、離婚してシングルマザーになって…という経験の中で、お金の大切さを身に染みて感じたこともあり、お金の勉強をしてみようと思い立ったんです。
—妊娠前はバリバリお仕事をされていたそうですが、妊娠・出産後も同じ仕事を続けようとは思わなかったのですか?
妊娠するまで働いていたのはIT系の広告代理店で、とにかく仕事がハードだったんです。その分、やりがいも大きく楽しかったのですが、出産してこどもを育てながら働き続けるという自分が思い描けなくて。一度は退職しましたが、社会とつながりたいという思いが強く、こどもが1歳になるころから派遣で事務の仕事を始めました。そして、こどもが3歳のときに離婚。派遣の仕事ではこどもを育てていくのは厳しいと感じ、求職活動を始めました。
—FPの勉強も、そのときに始めたのですか?
はい。それまでは、お金だけでなくキャリアについても、ビジョンを描いていなかったんです。成り行き任せといいますか、お金もキャリアも大切なことなのに、ちゃんと考えたことがなかった。でも、自分がシングルマザーになって、いろいろと調べてみると、経済的にも社会的にも、支援制度などがけっこうあるんですよね。それを知っているのと知らないのでは大違い! 私だけでなく同じ境遇のママたちも知っておくべき、知らせたいなと思ったのが、自身のキャリアについて考え始めたきっかけの一つです。
また、以前やっていた売り込み型の営業ではなく、ニーズを引き出すコンサルティングの仕事がやってみたいという思いもあって、“お金×コンサル”を考えたときに、FPの仕事が浮かんだんです。
実際にFPのテキストを読み進めると、FPというのはお客さま一人ひとりの多様な考え方や価値観に触れ、それに合ったものをご提案する仕事であり、私がやりたいと思っていたことにとても近いと気づきました。
大切なのは、相手の求めているものや
潜在的なニーズを探り、それに応えること
—FPを目指して勉強し、すぐに再就職できたのですか?
実は20代の頃に、スクールに通ってFP2級の資格を取ろうとしたのですが断念してしまい、当初は無資格でした。未経験可の募集はなかなかなく、当初は苦戦しましたが、幸運なことに、三井生命保険(株)にて未経験者でもOKという求人があったんです。FP事業部を新規で立ち上げたばかりで、採用に力をいれていた時期でした。ワーキングマザーのいない職場でしたが、会社の理解もあり、採用通知をいただく際に「限られた時間内に成果を出す働き方のロールモデルになってほしい」と言われて。当時は、子育てしながらちゃんと働けるだろうかと不安もありましたが、上司のこの言葉にとても勇気づけられました。そして、入社後にアフェリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー(AFP)の資格を取得しました。
—子育ても仕事もしながらの勉強って大変ですよね。どのように時間を確保していたのですか?
AFPの取得については、入社後の実務に必要な資格として、1年目に試験に合格することが目標づけられていました。その期間は朝4時に起床し、2時間ほど勉強。その後、朝の準備をしてこどもを保育園に送り、出社して夜まで仕事…という生活でした。大変ではありましたが、時間がないからこそ集中して勉強できたのだと思います。また、学んだ内容が仕事に直結したので、理論的な知識と実践的なスキルを同時に身につけることができたのも、ありがたかったですね。
—ところで、再就職をされてから、仕事と家庭の両立はスムーズにいきましたか?毎日お忙しくされていたと思いますが、シングルマザーとしての子育てはどうされていたのですか?
こどもが3歳のときに再就職し、9歳のときに独立しました。今振り返ると、あの6年間は、本当に多くの方々に支えられたと感謝の気持ちでいっぱいです。保育園時代にとくにお世話になったのが、ご近所のお世話好きの女性で、私たちが山さんと呼んでいた方。山さんは本当にいい方で、保育園の送迎からこどもの食事までやってくださり、ずいぶんと助けられました。小学校に入ってからは、ママ友にもお世話になりました。当時は頼りっぱなしだったので、いつか誰かにこの恩返しをしたいと思っています。
—それは素晴らしい環境ですね。うらやましいです。FPの仕事ときくと残業や休日出勤などが頻繁にあるように思うのですが?
人によって様々ですね。FPは自分の顧客は自分で開拓しなくてはならず、会社員ではあるものの自営業的な側面もあります。顧客の開拓方法も、平日の夜や休日にセミナーを開催する人、バリバリ営業活動をする人など、さまざまです。私の場合は、こどもがいるので残業や休日出勤はほぼ不可能。使える時間が限られており、その中で結果を出すにはどうすればいいか、上司にも相談しながら模索していきました。行き着いたやり方は、ご紹介、というスタイルです。実際、顧客の約8割はご紹介によるものでした。別の方を紹介していただくためには、お客さまの満足度を上げることが何よりも重要です。長時間勤務ができない分、一人ひとりに寄り添う丁寧できめ細やかな仕事を心がけました。こうして、自分に合ったやり方を確立できたことが、仕事のやりがいにも働きやすさにもつながったと思います。
理解ある上司、地域の人々…
周囲に支えられ、今の自分がある
—実際にFPとしてお仕事を始められて、いかがでしたか?
お客さまのセンシティブな部分に触れるので、予想以上に気づかいを要する仕事なのだと感じました。つい“アドバイス”をしたくなるのですが、そうではなく、相手の求めているものや潜在的なニーズを探り、それに応えることが大切。FPは数字を扱う仕事というのは表面的なイメージで、実際には人の思いに寄り添うスキルが求められると思います。
—では、数字に弱くても大丈夫!?
はい(笑)。計算やデータ化は機械に任せて、機械ができない“その人らしさ”の発見やそれに合った提案を、私がやっています。
—周囲の方に支えられて、会社の理解もあって…そのうえで独立しようと思われたのは、何かきっかけがあったのですか?
組織なので仕方ないとはいえ、上司が変わる度に指示に影響を受けてしまう自分をもっと主体的に変えたかったのがきっかけでした。会社には恩義を感じていましたが、自分で行動を起こすなら今かな、という直感もあって。お客さまにも自営業の方や起業された方などが多くて、刺激を受けたのもあります。一念発起して独立、というよりは、自然の流れで独り立ちした、という感じでしょうか。独立に際しても、新規開拓に力を入れることはせず、マイペースな歩み出しでした。当初は収入も減りましたが、人の縁が今の自分をつくってきたのだという思いがあり、不思議と焦りはありませんでした。「独立=ハードルが高い」というイメージがあるかもしれませんが、自分なりのスタイルや強みを確立し、周囲に認められたら、その次のステップとして独立という選択肢もありだと思います。
—波柴さんとお話をしていると、自然体というか、何でも受け入れる感じがあるのですが、それはご自身のキャリアにもあてはまるのですね。
離婚してシングルマザーになったという経験も含めて、“起こったことはすべてよいこと。人生の糧である”と考えるようにしています。起きてしまったことは、まずは受け入れる。相手のことも、まずは受け入れる。人を型にはめず、特別視することなく、あるがままの姿に寄り添う。そんな心づもりでお客さまとも接しています。
お客さまが自分らしい明日を描き
自立できるよう支えたい
—独立してCras-i designを立ち上げられて、仕事上の変化はありましたか?
独立前にも増して、お客さま一人ひとりのライフプランのコンセプトづくりに重きを置くようになりました。お客さまが、人生の中で何を優先させるのかを自分自身で考え、自分らしい明日へと一歩を踏み出すお手伝いをする。お客さまの自立を支えるFPでありたいと思っています。
—人生のコンセプトですか。あまり考えたことがなかったかもしれません…。
そうなんですよね。これからの人生のことや、それを支えるお金のことって、何かきっかけがなければ、考えないんですよね。自分の人生のことはもちろん、結婚すればパートナーとも話し合う必要があるし、その際にはお金の話だってもちろんするべきなんです。でも、とくに日本人は、親しい間柄であっても、お金の話をすることをためらいがちです。恥ずかしながら、私自身も、ちゃんとできているとは言えません。
—はい、私もできていません。なかなかお金の話はしにくいです…。
ですよね。FPとしての私の今後の課題は、家族や夫婦間のコミュニケーションの中で、お金の話も含めて自然とライフプランについて語り合えるような環境をつくっていくこと。
もうすぐ団塊の世代が高齢者となり、莫大な医療費や年金を少ない人数で支えていかなければならない時代がやってきます。私たちや私たちのこども世代が、一番苦しいと言われています。そんな時代を生き抜かねばならないこどもたち世代には、お金の知識やお金との上手なつき合い方をしっかりと身につけてほしいと思います。そのためにも、学校の教育だけに頼るのではなく、家庭でもお金について学ぶ機会を持つことが、大切なのではないでしょうか。
—本当にそうですよね。独立から今年で丸3年になりますが、今後あらたに挑戦したいことなど考えていらっしゃいますか?
実は新しいパートナーとの出会いがあり、この春には出産を控えているんです。そのため、産後しばらくは気軽に受けていただけるカウンセリングを中心に、徐々に復帰していきたいと考えています。スカイプ相談なども挑戦してみたいですね。今回の出産や育児の経験もまた、自分を成長させてくれると思うので、仕事も子育ても、私なりのペースでしっかりと歩んでいきたいと思います。
仕事もプライベートの管理も『Campus Diary』一冊で。マンスリーとウィークリーが上下で分かれているので短期、長期の両方の予定が一目で見られて便利。
4月から6年生になる娘は読書好き。科学の本から小説・漫画までジャンルにこだわらず読んでいます。担任に「習ってないこともよく知っている」と言われたことも。

波柴さんの ある1日


6:30 起床、朝食準備
7:00 娘を起こし、朝食
7:40 娘を小学校に送り出す
8:30 コーヒーを飲みながら、新聞やニュースをチェック
9:00 出勤(自宅からオフィスまで徒歩15分)
10:00

来客(打ち合わせなど)

12:00 ランチ
13:00

18:30
来客もしくは資料作成・原稿執筆など
19:00 帰宅、夕食準備
19:30 娘と夕食
20:30

入浴など

22:00 娘が就寝後、フリータイム
24:00 就寝(日付が変わる前に)

取材を終えて

自分が大切にしたいことは何か? このことを考え続けた結果が波柴さんの仕事のスタンスをつくっているように感じました。その波柴さんらしさ、つまり「強み」は、重要な武器になるだけでなく、自分の道(夢)をまい進する原動力にもなるんですね。自分の強みってなんだろう、と頭に浮かんだことの中には「たいしたことな」と思うこともたくさんあります。しかし、その中から大きな価値が生まれるかもしれません。年齢や過去の経歴など関係なく、「自分の強み」は何か? じっくり考えてみる機会を持つべきと改めて思いました(河内)。

文/笹原風花 撮影/野村一磨