2015.3.20

WorMo’的ワークスタイル

「考える力」と「伝える力」で仕事に自信

ワークスタイルアドバイス/意見や発言に根拠を

もっと自分らしく、自信を持って働きたいワーキングマザーに向けて、様々な専門家からのアドバイス「WorMo’的ワークスタイル」専門家アドバイス編。
今回は、自分で考える力イニシアティブ「THINK-AID」を主宰する狩野みきさんに、「自分の意見をもつこと」「意見を伝えること」をテーマにお話を伺いました。ビジネスの場で生かせる考え方やテクニックが盛りだくさんです。

インタビューアー/WorMo’編集長
河内律子(4歳児のワーキングマザー)

「知的コスプレ」が
理解の手助けになることも
――2冊の著書を拝読させていただきましたが、「自分の意見の作り方」や「自分の考えを的確に伝えるコツ」などオフィスで実践したいテクニックがたくさんあって、ぜひワーキングマザーにも紹介したいと感じました。
ありがとうございます。私は、欧米のハイスクールなどで導入されているクリティカル・シンキングという考え方にもとづいて、「考える力」や「伝える力」の向上を目的に、小学生や大学生、ビジネスマンに指導を行っています。
――そもそも、なぜ「考える力」や「伝える力」が必要だとお考えになったのですか?
私自身の海外経験によるところが大きいですね。欧米の人と話していると、政治に関する意見から夕食のメニューまで、「どうしてそう思うの?」と根拠を聞かれるんです(笑)。
――確かに、日本では、相手の意見や感想に対して「どうしてそう思うの?」なんて、聞き返すことは少ないかもしれません。「なんとなく」意見を言ったり、行動していることが多いかも。
そうなんです。でも「なんとなく」の意見は、グローバル社会では通用しません。それに、この「しっかりした意見を持つ」ことと、その意見を「伝える力」は、外国人と接する機会の少ない職場でも活かせる大切なスキルだと思います。
そう感じるのは、まさにわたしがつらい経験をしてきたからです。
こどもの頃から、自分の意見に対して人から突っ込まれのが苦手で、いつもビクビクしていました。30歳ぐらいになると、そのビクビクが身体に出るようになって、肩がガチガチに凝って眠れなくなったりして。「考える力」や「伝える力」に目を向けるようになったのも、「こんなビクビク体質を卒業して、楽しく生きたい。そのために、しっかり考えたり、意見を言ったりできるようになりたい」と思ったのが一つのきっかけなんですよ。ワーキングマザーにも、自信をもって考えたり、意見を伝えられるようになってほしいと思います。
――では早速、「考える力」を伸ばすコツからお聞きしていきたいと思います。
「考える力」を伸ばすには、「しっかり考える」という習慣をつけること(笑)。そのためには、4つのステップが必要だと思っています。例えば会議で同僚が提案したトピックについて、しっかりとした考え(=意見)をもつには次のステップになります。
  • ①そのトピックについてどれだけ理解しているか確認
  • ②理解できていないことを解決するためにリサーチ
  • ③理解したことを基にとりあえずの考え(=意見)をもつ
  • ④他の視点も検討したうえで最終的な考え(=意見)をもつ
――聞いたことのあるトピックだと、「ああ、それはわかってる」と勝手に判断してしまって・・・フラットに考えるのは難しいですよね。①の理解度を確認するステップや、②の理解できてないことをリサーチするステップをつい飛ばして、③にいってしまいそうです。
何に対しても、100%理解するのはたぶん無理ですよね。でも、「できるだけ理解しよう」と努めて対象にコミットする姿勢は大切です。特に、人に対して理解しようと努めると、その気持ちは必ず相手にも伝わって、信頼関係につながると思います。それが①と②のステップにつながると思います。
――そこも難しいんですよね。話し相手に対する先入観があると、フラットに考えづらくないですか?例えば、ちょっと苦手意識のある人だと、発言もうがった気持ちで聴いてしまい、その人の発言を正面からとらえられないこともあると思います。
苦手な上司の発言とかね。
――わかります(笑)。できれば感情を入れずに発言の内容を受け止めたいのに、その人の発言というだけですべてをネガティブにとらえてしまったり。
そんな時は、「知的コスプレ」をしてみたらどうですか?
――?! コスプレですか…?
いえ、上司の服装を真似するわけじゃないですよ(笑)。その人の職歴や家族構成など自分が知っている限りの情報を駆使して、上司の気持ちになりきってみるんです。すると、「この人のバックグラウンドなら、あの発言が出てくるのも無理はないな」と納得できるかもしれません。実際には違うかもしれないけど、相手を理解しようと努めることで冷静にはなれますよ。
――確かに、冷静になることで発言の中に含まれているいい視点も見えてきそうですね。
そういった点では、発言をメモして、そのメモを考察するというのはどうでしょうか?
それもいいですね。文字にすることで、感情の色眼鏡を外して、発言の内容を客観的に見つめられますから。
――そうですね。記憶だけだと、発言の内容が自分の中でネガティブ寄りにすり替わる可能性もあるけれど、メモしておけば間違いないですよね。苦手な人に対してでなくても、発言をさっと書きとめるテクニックは、ミーティングやブレストで役に立ちそうです。
「意見に不正解はない」と
知っておくことが大前提
――もう一つお聞きしたいのが、「自分の考えを伝えるコツ」についてです。会議などで発言する場合、「周りにどう思われるだろう」という不安がまずありますよね。
前提としてお伝えしたいのは、「意見には正解も不正解もない」ということです。西欧では、いろいろな視点の意見で議論するなかで新しいモノを創り上げるという文化が定着しています。でも日本人は、他の人の発言に対して、意見も反論も言わない人が多いですね。
――自分が突っ込まれるのが怖いので、穏便に済ませたい気持ちも…。
そこは「考える力」にもつながりますが、何を質問されても答えられるように、発言内容の根拠を徹底的に準備をする姿勢が大切です。なぜなら、意見とは根拠から導き出された自分なりの結論で、伝わらなければ意味がないからです。
そして、自分の意見を伝えるには、まず自分自身を納得させられるだけの根拠をもつこと。根拠のない意見には相手を納得させるパワーもありません。自分自身を納得させられるまで、「なぜ?」「なぜ?」と問いながら、とことん掘り下げていくことが大切なんです。
――なるほど、「なぜ?」と掘り下げていくことで、一番伝えたいことや重要な部分が明確になって、ブレのない意見になりますね。でも、習慣化するのは大変そうですが…。
そのためのトレーニングは簡単なんですよ。例えばカフェでドリンクを注文する時は「まろやかなミルクの味が好きだからカフェラテ、そんなに量はいらないからショートサイズにしよう」といった感じで、その日に着る服やランチのお店など、あらゆる行動に根拠を考えてみるんです。考える行為ってクセになるので、会議の場で発言するにあたっても、その意見をいう根拠をしっかり考えられるようになるはずですよ。
――そのトレーニングはすぐに実践できそうですね。でも、いくら準備していても、思いがけない方向から質問や反論が飛んでくると、ドキドキしてしまう気がします。
その場合も、「意見に正解・不正解はない」という原則を思い出すといいですね。自分にない意見を相手が提供してくれたわけですから、会議の内容が一段階深まったことになるわけです。苦手な上司のケースと同じで、この時も相手の発言をメモすると、少し冷静になれます。ただし、「発言のための発言」みたいな内容もなかにはあって、そうなると会議がどんどん脱線していきますよね。
――あります、あります。かなり脱線するまで意外と気づかなかったり。
そうならないためにも、「今、話すべきテーマは何か」を常に意識するクセはつけた方がいいですね。これも、日常生活のなかでトレーニングできます。
――プライベートでもできますか?
もちろん。例えば同僚とランチに行って話している時って、話があちこちに飛ぶでしょう。
――それはもう(笑)。最初になんの話をしていたのかわからなくなることも多いです。
そんな時に、「今はこどもの保育園の話をしているな。あ、習い事の話からテニスの話に移った」という感じで、話のテーマを常に意識しておくといいんです。そうすると会議でも、脱線してきた時に気づいて指摘しやすいと思います。
――論理的に考えたり、議論を深めたりするのは難しいと思っていたけれど、意識を変えるだけで「考える力」や「伝える力」を磨くことはできるんですね。知的コスプレや、根拠を掘り下げるトレーニングは、ぜひ取り入れてみようと思います。
著書:『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』、『世界のエリートが学んできた 自分の考えを「伝える力」の授業』(共に日本実業出版社)

〈狩野みきさん 近日刊行書籍〉
『「自分で考える力」が育つ 親子の対話術』

子どもの考える力を伸ばしてやりたい、という親御さんが増えています。子どもの考える力をいちばん伸ばしてやれる場、それは家庭です。親が何をどう問いかけ、どう対話すれば子どもは考える力を伸ばすことができるのか。「子どもの質問に、すぐ答えを渡さない」「ゲームを考える力に変える」など、家庭でできる、考える力トレーニング方法を伝授。ベストセラー『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』の著者が送る、親子で考える力が伸び、子育てをもっと楽しめるようになる一冊です。

狩野みき

自分で考える力イニシアティブ「THINK-AID」主宰。「THINK-AID」では、ディスカッションやプレゼンテーション、作文などを通して、こどもたちが「自分で考える力」や「伝える力」を身につけられるよう指導を行っている。慶應義塾大学、聖心女子大学、ビジネスブレークスルー大学でも講師を務め、大学生やビジネスマンにも、意見の作り方や伝え方を指導。著書に『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』、『世界のエリートが学んできた 自分の考えを「伝える力」の授業』(共に日本実業出版社)など。二児の母。

取材を終えて

取材前にスタッフがお渡しした名刺を見ただけで、「苗字の由来は?」「なぜこの紙質を選んだの?」など次々と質問をされていた狩野さん。取材が始まる頃には場がとても盛り上がり、まるで以前からの知り合いのような雰囲気に。このように名刺というちょっとしたキッカケから興味や疑問をふくらませ、たくさんの情報を引き出して、相手への理解を深めようとするその姿勢は、時間のないワーキングマザーにとっても有益なスキルなのではないでしょうか。そして、こういった「なぜ?」と思う気持ちや質問は、こどもに対しても有効! こどもが自分の意見を言えるようになるだけではなく、他人の気持ちを思いやる姿勢も育まれると思いました。(河内)

文/横堀夏代 撮影/石河正武