2014.9.10

WorMo’的ワークスタイル

個人の輝きを引き出すマネジメントの手法

ワークスタイルアドバイス/男女の性質を活かす

もっと自分らしく、自信を持って働きたいワーキングマザーに向けて、様々な専門家からアドバイス「WorMo’的ワークスタイル」専門家アドバイス編。
今回は、家事代行サービスのリーディングカンパニー『株式会社ベアーズ』の専務取締役として会社を率い、人財育成を担当する高橋ゆきさんに、「男性と女性の資質の違いと接し方のポイント」や「個人のバイオリズムを知り、マネジメントに活かす方法」など、リーダーとして人を輝かせるための極意を伺いました。

インタビューアー/WorMo’編集長
河内律子(3歳男児のワーキングマザー)

男性と女性では
声をかける最適な時間帯が違う
――ベアーズは現在15期目を迎え、関東・関西のオフィスに社員160名と4000人超のスタッフが所属しているとお伺いしました。それだけたくさんの社員がいると、マネジメントも意志の共有も大変だと思いますが、マネジメントのコツや秘訣はあるのでしょうか?
社員には、個人の強味を生かして輝いて仕事をしてほしいと考えているので、全員を同じようにマネジメントすることはありません。個人を尊重し、誰に対しても必要なときには厳しいこともきちんと伝えるようにしています。
ただ、性格的な傾向や特徴に性差があることが今までの経験からわかってきているので、伝え方やタイミングなどは意識して変えています。
――男女別の対応をされているんですか?!具体的にはどのような工夫をされているのでしょうか?
たとえば、何かを注意をするときは、女性には朝イチか遅くても15時までに声をかけます。女性の「許容」や「柔軟」といった素晴らしい特質が生かせるのは午前中なんです。どんなに優秀な女性でも、夕方には仕事モードから「今日はお夕飯なんにしようかな。子どものお迎えに早く行ってあげたいな」なんて家庭モードへと心のスイッチが切り替わってしまいます。だから仕事のことは、仕事時間内で解決できるよう、早めに声をかけた方がうまくいきます。
一方男性は、夕方以降に伝えるのがベスト。と言うのも男性は、朝に注意すると一日引きずってしまう傾向があるからです。帰り際などに「どうしたの?らしくないよ」なんて、そっと声をかけてあげると、翌日にはスッキリした顔で仕事に臨める…というわけです。
――伝える内容だけでなく、時間帯まで意識するというのは非常にユニークですね。高橋さんの観察力には驚かされますし、愛情を持って社員の方に接していて・・・とてもステキですね。その他にも、コミュニケーションをとる際に意識していることなどがあれば教えてください。
不満やストレスがたまっている社員から相談を受けることも多いのですが、相手が女性のときには、一筆箋を渡して、不満や感じていることを箇条書きにしてもらいます。一筆箋に書くだけで冷静になって、自己完結してしまうことも多いんですよ。だいたい3回繰り返せば、キーッとなるようなこともなくなります(笑)
一方、男性が同じように不満だらけになっていたら、まずはウンウンと聞いて、受け止めてあげること。極端な話をするなら、右から左へ聞き流してもいいくらい、ただ聞く。そして最後に「まぁ、あなたなら大丈夫なんじゃない?そのままでいいわよ」と、肯定の言葉をかけてあげます。男性というのは、やってほしいことがはっきりしているので、それを汲み取ってあげれば、仕事関係であっても家庭内であっても、上手にコミュニケーションが取れるようになります。
――女性には客観的になるためのツールと時間をあたえ、男性は全て聴いてから肯定してあげる。非常に共感できますが、そういった違いは、マネジメントをしながら気付かれたんですか?
性格も好みもまったく違う息子と娘を育てた経験が大きいですね。女の子は新しい命を宿し育む力があるからか、幼くても包容力があって直観力がするどい。女の子を動かすためのキーワードは「共感」や「納得」です。一方男の子は、いくつになっても「包容」や「肯定」を求めているようですね(笑)
――子育てで体得したことが、そんな形でマネジメントに活かせるとは!まさに女性ならではの強みですね。性差以外に、マネジメント上で意識していることはありますか?
個人のバイオリズムも意識しています。女性の場合、生理期間中は落ち込み気味…という人もいれば、逆に元気いっぱいになる人も。そういったバイオリズムにも配慮し、声をかけるタイミングや依頼する仕事の内容をかえたりしています。こういった配慮ができるのは、女性ならではのものでしょう。
体調や心の動きを知る
バイオリズムマネジメント
――個人のバイオリズムをマネジメントに生かすという発想は新鮮ですね。ただ、把握するのが大変そうですが…
まずは各自に「自分のバイオリズム」を認識してもらいます。バイオリズムを知るためのオススメの方法は、マンスリーの見開きの手帳に「今日の私はかわいい!と思える日は○、ふつうなら△、いまいちなら×のマークを3ヶ月間記入していくこと。それと生理周期を合わせて見返してみるとどんな時に自分はアップして、いつダウンするのかなど、自分の傾向がつかめます。
私も、重要なプレゼンテーションや講演日などは、できるだけバイオリズムがアップしている日で調整します。また、ダメな日の自分もあるがままを受け入れ、無理せずその時の自分ができることをするようにしています。人は、毎日120%の力で頑張り続けることはできませんからね。
私が「一番かわいい」のは
一体どんなとき?
――毎日120%は無理でも、責任感から無理して頑張ってしまう女性も多いと思いますが・・・
私自身、会社を立ち上げてすぐの頃、過労で入院したことがあるんですが、その時から仕事に対する姿勢や考え方、自己管理に対する意識は大きく変わりました。自分のことを本当に理解できるのは、自分しかいません。お医者さんでもパートナーでも、自分以上に自分のことをわかる人はいない。思い込みや常識にとらわれることなく、今日の自分の心や体はどんな状態だろう?と己を見つめることが必要だと強く思うようになりました。たとえば、自分のベストな状態を作る睡眠時間だって、みんな違うんですよ。ちなみに私が「一番かわいい状態」でいられる睡眠時間は、4時間半。だから、大事な取材などがある日は、4時間半睡眠で臨みます(笑)
――「自分のことを自分で管理し、人に委ねない」というのは、当たり前のようでいて難しいですし、とても大事なことですよね。
自分で自分をコントロールできるようになると、他者と自分を比較したり他人をうらやんだりすることがなくなりますし、自分が物事の中心にいるという実感がどんどん増して、いいことも悪いことも全て「自分ごと」になります。そして、己の人生を大事にできるようになる。そうなると人は一気に輝きだして、とても美しくなる。まさに人生の出発点を迎えます。
さらに不思議なことに、「自分が主役」という意識を持つようになると、他者を思いやる気持ちも強くなるようです。チームの仲間同士でフォローし合う関係ができて、自然に役割分担して頑張ってくれるようにもなるのです。
チーム力向上のポイントは
リーダーシップ・マインドと誰かのナンバー2になること!
――1人ひとりが自分のことを知りパワーアップすると、チーム力も上がるということですね。私自身、チーム力の向上は、とても大きな課題だと感じています。
チーム力の向上には、ポイントが2つあります。一つ目は「チーム全員がリーダーシップ・マインドを持つこと。「人は誰もが、誰かのリーダーである」と自覚すると、皆意識が変わります。チーム内の温度差がなくなり、良い関係性が築けるようになりますよ。すぐれたリーダーシップには、3つの共通項があります。「豊富なボキャブラリー」、「磨かれた表現力」、「自信を持たせる終わり方ができること」。具体的で的確な言葉があれば、コミュニケーションも円滑になり、想いやビジョンの共有もスムースになりますし、気持ちよいまとめ方ができるようになると、対人関係も円満になります。
2つめのポイントは、「自分は誰かの特別なナンバー2である」という意識を持つこと。ベアーズでは皆が「自分のナンバー2」を決めて、それを本人に告げるようにしています。「あなたは私にとって大事なナンバー2です」と言われたら、うれしいでしょう?
たとえば私は、ベアーズで言えば社長のナンバー2ですが、私には、秘書をはじめ役員たちというナンバー2がいる。そして、その役員たちにもナンバー2がいる。誰もが誰かのナンバー2なんです。立場や役職は関係ありません。自分がナンバー2のときは、上の人間がうまくいくようにサポートし、自分のナンバー2のためには頭も下げるし、全力でサポートをする。この関係がチームの絆を強くして、士気を高めることにつながります。
感謝と愛を胸のど真ん中に!
「人生まるごと愛してる」
――誰もがリーダーであり、ナンバー2でもある。仕事の場だけでなく、家庭やプライベート、すべてのシーンでも同じことが言えますね。
最後に、日々育児や仕事に励む女性たちに向け、メッセージをお願いします。
私の座右の銘は「人生まるごと愛してる」。辛いことも含め、人生はすべて学び。むしろ苦しい環境でこそ、人は輝く。私たちは皆、地球という人間力を鍛える学校に学びにきた魂であり、最も大事なことは「成功」ではなく「成長」です。仏教用語に「冷暖自知」という、水の冷暖は自分で体感しなくてはわからない…という意味を持つ語があるのですが、成長するには、何事も自分で体験すること。無難に生きて感動のない人生を送るのではなく、ぜひ、自分を輝かせる生き方をしてほしいと思います。
そして「足元だけでなく、星空も見よ」という、わが社の執行役員の言葉を贈ります。一歩一歩堅実に歩んでいくことはもちろん大切ですが、理想や志を忘れることなく毎日を生きていくことができれば、きっと今の自分よりももっと美しい自分に出会えるでしょう。

高橋ゆき

株式会社ベアーズ専務取締役。主にマーケティングと人材育成を担当。夫でもある代表取締役の高橋健志さんとともに、日本における家事代行サービスのリーディングカンパニーとして、会社を育てきた。2000年より家事研究家としても活動し、テレビや雑誌にも多数出演。親子や夫婦で楽しむ家事コミュニケーションを提唱している。初の著作、オールカラーの実用コミックエッセイ『可愛くなる家事(サンマーク出版)』も出版。

取材を終えて

優しい眼差しからは想像もできないほどの鋭い観察眼をお持ちの高橋さん。「個人の強みを活かしてもらいたい」というお考えから編み出されたマネジメント法は「男女別マネジメント術」や、「バイオリズムマネジメント」、「一筆箋」など、自分を客観視できるユニークな方法で、どれもすんなり納得できるものばかり。「思うようにコトが進まない」…そういうときこそ、気持ちを上手にコントロールすることが大切なんですね。私もモヤモヤしたときは、一筆箋に書き出してみようと思います。 母だから、子育てをしたから、男女で異なる接し方が必要と実感されたという高橋さんの心強い言葉に、働く母への強いエールを感じました!(河内)

文/田中社(田中青佳) 撮影/ヤマグチイッキ