2020.3.26

WorMo’的ワークスタイル

キャリアにこだわらないベトナム人の働き方

男女格差の是正が今後の課題

女性の就業率が約72%と高水準を維持しているベトナム。女性も働くのが当たり前という風潮のなか、祖父母や親族が積極的に育児に関わるなど、家族の強い結びつきが大きな支えとなっています。また、よりよい給料や環境を求めて転職を繰り返すなど、自分の幸せや楽しみを第一に考えるベトナム人の自由さが、働きやすさの根底にあるようです。世界各国の働き方をご紹介する連載の第9回目は、そんなベトナムからのリポートです。(※コロナ禍以前に作成したリポートです)

共働き家庭を支える
祖父母や親族との絆
経済的にも社会的にも発展途上にあるベトナムでは、男性の稼ぎだけで生計を立てるのは厳しい家庭も多く、共働きが当たり前です。ベトナムの非政府・非営利組織である開発統合センターの発表によると、ベトナム人女性の就業率は約72%で、世界の平均(42%)を大幅に上回っています。
妊娠や出産を理由に退職する女性は少なく、子どもが小さいうちは定年退職した祖父母が子どもの面倒を見るという家庭がほとんど。ベトナムでは年老いた親の介護を家族で行う習慣が根づいており、核家族は少なく、両親と同居している人が多いので、子育てを手伝ってもらいやすいというメリットがあります。
また、親族同士のつながりも強く、都合のつく人が子どもの面倒を見るのが当たり前だと考えられています。たとえば、両親はハノイで働いているが、子どもは田舎にいる叔母の家で暮らし、週末だけ親子一緒に過ごすといったケースもまれではありません。子どもを親族の家に預け、海外に出稼ぎに行くという人もいます。親やきょうだいとの絆の強さが、共働き家庭の支えとなっているのです。
根強く残る
男尊女卑思想
女性の社会進出が進む一方で、とくに農村地帯を中心に、男尊女卑の考え方が根強く残っています。「家事は女がやるもの」「女は人前で酒を飲むな」などと考える人もまだ多いのが実状です。
企業においても、管理職などの上位ポストに就いているのはほとんど男性で、多くの女性は事務や補助的な仕事を担っています。営業や企画開発などの仕事も男性が多いなど、社会的にも女性が低く見られる傾向があります。
ハノイなど都市部の中心街などでは、食堂やお店でキビキビと働く女性の姿をよく見かけますが、こうした女性のほとんどは自営業やパートで、正規雇用の機会は男性に比べて極端に少なくなっています。低賃金や福利厚生の欠如など、劣悪な労働環境にさらされている女性も少なくありません。
定年退職の年齢にも男女差が見られます。男性は60歳なのに対し、女性は55歳と法律で規定されているのです。2021年からはこの年齢を毎年6か月ずつ伸ばし、男性62歳、女性60歳まで延長する提案がなされていますが、依然として男女間の開きがあります。このような差が法律上で公然と認められていることには驚かされます。
一方で、マスターカード・ワールドワイドが2013年に発表した「女性の進出度調査」によると、ベトナムでは「中等・高等教育機関の進学率」において、女性が男性を上回っていると報告されています。教育レベルの高い女性が増えることで、今後は女性の社会的地位が向上していくかもしれません。
ストレスフリーな働き方で、
昼寝もOK
ベトナムでは、お店の店員が携帯電話をいじりながら接客していたり、店の奥で休んでいて店頭にいなかったりする場面によく遭遇します。サービスが悪い、マナーがなっていないなどと感じる日本人も多いでしょう。
でも、ベトナムではそれがスタンダードで、客もとくに気にしません。「仕事中だからこうするべき」とか「時間や締め切りは必ず守るべき」といった意識もあまりないので、たとえば仕事が終わっていなくても、定時になればさっさと帰ってしまいます。こうした働き方を手放しで推奨することはできませんが、このようにある程度手を抜いて仕事をしているからこそ、ストレスもなく楽しく働けるといった側面もあるでしょう。実際、ベトナムでは自殺や引きこもりといった問題はほとんどありません。皆が無理をせず、楽しく幸せに働いている、それこそが「ベトナム流」なのです。
また、ベトナムでは昔から昼寝(シエスタ)の習慣があります。特に南部では一年中気温が高く、最高気温が30度を超える日も多いため、日中の一番暑い時間に活動するのは疲れるから休んだほうがいいという認識があるようです。
学校はもちろん、会社やお店でも昼寝の時間があります。昼休みが1時間半~2時間と長く、30~40分ほどで昼ご飯を食べ、あとは昼寝をするというのが一般的です。昼寝のスタイルはさまざまで、机に突っ伏して寝る人もいれば、床の空きスペースにゴザを敷いて寝ている人もいます。会社が広ければ、ゴザや枕を床に並べ、皆で一緒に横になって昼寝をするといった光景も見られます。昼の時間帯はお店が閉まっていることも珍しくありません。
日中にお店が閉まっていたり、役所や会社が休憩中で対応してもらえなかったりしたら不便な気もしますが、ベトナムではそれが当たり前なので、あまり気にする人はいません。グローバル企業でも、たとえば時差や旧正月などと同じように、ベトナムの文化として理解したうえで、その時間帯の連絡は避けるといった対応がなされるため、とくに問題が起きることもないようです。
より良い仕事を求めて
転職を繰り返す
転職が多いのもベトナム人の特徴です。日本のように、同じ会社で長く働くのがよいという風潮はなく、仕事が合わないと思ったら、我慢せずにすぐ辞めて、次の職を探します。「あちらの仕事のほうが、給料はいいから」という理由で、仕事を簡単に辞めてしまう人も少なくありません。
スキルアップのためというよりは、単により良い環境や給料を求めて転職する人が多いようです。その根底には「大事なのは今」という意識があります。将来のことを考えて計画的に働くのではなく、「今」を楽しく過ごしたい。そのために「今」やりたいことを優先して仕事を辞めたり、新しい仕事を探したりするわけです。
そんな不安定で不確かな生き方で大丈夫なのかと心配になりますが、ベトナムの人々は気にしません。家族と過ごす時間を大切にし、家族とより良い暮らしをするために、給料のいい仕事を求めて転職する。大事なのは、人生を楽しむこと。そんなシンプルな考え方こそが、「アジアで一番幸せな国」(New Economics Foundation調べ)といわれる所以なのかもしれません。

斉藤悠子

グローバルママ研究所リサーチャー。出版社勤務を経て、2009~2015年まで台湾・台北に在住。在台中は大学の語学センターで中国語を勉強。帰国後はフリーライター兼編集者として、台湾情報やインタビュー記事、子育てやビジネス関連の記事などを執筆。夫と娘二人の4人暮らし。


グローバルママ研究所

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。