2020.2.14

WorMo’的ワークスタイル

出生率優等生だったフランスに異変あり!

4年連続減少の背景と女性の働き方の現状を探る

出生率2.00前後で少子化対策先進国として知られるフランスですが、2015年以降4年連続で出生率が低下し、世界でも話題になっています。そもそも、フランスではどのような少子化対策が取られてきたのでしょうか。また、再び少子化になってきている理由とは? 世界各国の働き方をご紹介する連載の第8回目は、そんなフランスの社会事情をリポートします。

政府の積極的な少子化対策で
出生率は2.00超に
フランスでは1994年に合計特殊出生率が1.66まで低下し、大きな社会問題となりました。そこで、政府は家族手当の充実や子育て世帯への特別減税といった家族政策を打ち出し、積極的な少子化対策に乗り出しました。
特徴的なのは、こうした政策が「産めば産むほど有利なシステム」になっていることです。たとえば、家族手当は二人以上の子どもを育てる家庭に、所得制限なしで子どもが20歳になるまで支給されます。第3子からは、さらに家族補足手当も支給されます。また、3人以上の子どもを育てている世帯に対しては、所得税が大幅に減税される仕組みも導入されています。こうした取り組みにより、2010年には出生率が2.00を超えるまでに回復しました。
しかしながら、近年は出生率の減少傾向が続いています。その原因としては、不況による政府の緊縮政策があげられます。家族手当の減少、公立校の廃校(2019年度に400校廃校)、失業保険の受給条件の厳格化、年金受給額の減額などにより、経済的な不安感が高まり、2018年には出生率が1.87まで低下してしまいました。
高キャリアを目指し、
出産は後回しに
また、若い世代が出産より仕事を優先させるようになってきたことも、少子化の一因となっているようです。実際、出生率を年齢別に見てみると、15~24歳の出生率の落ち込みが特に大きくなっています。一方、大学や大学院に進学する女性が増えており、2015年の調査では大学以上へ就学した女性の割合は55%と、男性を上回っています。政治家や学者といったステイタスの高い仕事を目指すなど、女性の仕事の幅も広がってきています。
その背景には、男女平等意識の高まりがあるようです。YouTubeなどでも男女平等をうたうCMが数多く流れていて、男だからこう、女だからこうという意識を払拭しようという風潮があります。それを受け、特に若い世代では、女性であってもさらに学歴を重ねて、上を目指したい、目指すべきだと考える人が増えています。
高キャリアを目指そうとすれば、学業にかかる時間も長くなりますし、仕事に割く時間や労力も大きくなります。まずはキャリアを積んで、落ちついてから子どもを持ちたいと考えると、出産年齢はどうしても高くならざるをえません。
実際に、国立統計経済研究所の調査によれば、1977年には26.5歳だった出産平均年齢は、2017年には30.7歳となっています。初産が遅くなれば、当然、生涯のうちに産む子どもの数も少なくなります。こうしたことも出生率減少の一因になっていると考えられます。
男性の育児参加を促す
「父親休暇」
しかし、減少しているとはいえ、日本の出生率(1.42/2018年)と比べると、フランスは依然として高いレベルを維持しています。それを支えているのが、男性の育児参加です。
フランスでは妻の出産にあたって、男性にも3日間の「出産有給休暇」が認められています。さらに、普通出産の場合は11日、双子以上なら18日の休暇(保険で給料の8割を補償)を取ることができます。近年では約7割の男性がこの父親休暇を利用しています。
この制度は「父親の育児スタートアップ期間」としても役立っています。産後の入院期間中は、父親も母親と一緒に助産師から沐浴やおむつ替えなどの指導を受けます。生まれたばかりのわが子と積極的に触れ合うことで、父親としての自覚を促すのです。
フランス政府調査評価統計局が2016年に行った調査では、父親休暇を取った男性のほうが、取らなかった男性よりもその後の育児参加率が高いという結果も報告されています。保育園や学校に送迎に来るのも3~4割は父親で、平日でも積極的に子どもと関わっている様子が伺えます。
学校の水曜休日制で
親も週4日勤務に
休みを取りやすいというのも、働きながら子育てをするうえでは重要です。フランスで働く日本人からは「会社を休む人が多くて驚いた」という声も聞かれます。よくあるのは病欠で、体調が悪ければすぐに仕事を休んで病院に行き、傷病手当を受け取ります。子どもの体調不良や学校のストライキなど、やむを得ない場合はもちろん、家族の集まりがある、歯医者や銀行に行く、運転免許の試験を受けるといった理由でも、有給や無給休暇を取るのが当たり前。誰もがそのようにしているので、心証が悪いなどということもありません。
また、フランスでは幼稚園および義務教育機関は水曜日が休み、または午後半休となっています(2019年現在、87%の市区町村で水曜休みが定着)。そのため、両親のどちらかが水曜日を全休か半休にする時短勤務(週4日勤務)を選択する家庭が多くなっています。特に3歳以下の子どもがいる家庭では、時短勤務に対して補助金が出るので、子どもに合わせて親も休むというのが一般的です。フレックスタイム制を導入している会社であれば、他の曜日に長く働くことで帳尻を合わせることもできます。
両親ともどうしても休めないときは、祖父母に面倒を見てもらったり、国家資格を持つ保育アシスタントさんに預けたりします。3歳以下の子どもの場合は、保育アシスタントさんに支払った給料の半額が税金控除という形で返ってくる制度もあり、子どもの預け先に困るということはありません。
フランスでは1980年代から学校の週4日制が定着しているので、企業側も子育て中の人が会社を休んだり早退したりすることに寛容です。時短勤務であれば、仕事量も相応に調整されますし、水曜日には重要な会議を入れないといった配慮をしている会社もあります。ただ、時短勤務やパートタイムを選択するのは圧倒的に女性が多く、この点は今後の課題といえそうです。
人生を楽しむために
バカンスは最重要
バカンスを何よりも大切にするというのも、フランス人の大きな特徴といえるでしょう。単に長期休暇を取るということではなく、滞在型のリゾート地に行ったり、家を借りて田舎暮らしを楽しんだりするなど、一定の期間、自宅を離れてのんびりと過ごすのが、フランス人にとっての「バカンス」です。
2018年にバカンスに出たフランス人は、過去17年間で最高の66%を記録しました。また、 Raffour Interactifが2017年に行ったアンケートによれば、フランス人の55%が「バカンスは生きるうえで必要不可欠なもの」と答え、67%がバカンスのために特別な貯金をしているそうです。フランス人に「バカンスとは何か」と聞いてみると、笑いながら『バカンスは人生そのものだよ』『バカンスのために生きているのさ』などと答えてくれます。
フランスでは年に5週間(土日を含む)の有給休暇が認められており、そのうち12日間は法定期間(5月1日から10月31日まで)の間に連続休暇として取得しなければならないと定められています。企業によっては、夏の間に4週間の休暇を取るとか、夏に最低2週間は休むといった規定があるなど、特に夏のバカンスを推奨する風潮が見られます。
休暇中は仕事に関する電話やメールには出ない、返信しないというのが普通で、完全なオフモードになります。仕事を忘れ、家を離れ、海辺や田舎で数週間のんびりと過ごす。そうやって心身ともにリフレッシュすることで、また頑張って仕事をしようというエネルギーがわいてくるのかもしれません。
このように、仕事にあくせくするのではなく、人生を楽しむことが第一というフランス。そんなゆとりのある働き方が浸透しているからこそ、働きたい、もっとキャリアアップしたいと考える女性が増えているのかもしれません。今後、女性の社会進出と出生率のバランスはどうなっていくのでしょうか。フランスの動向が注目されます。

斉藤悠子

グローバルママ研究所リサーチャー。出版社勤務を経て、2009~2015年まで台湾・台北に在住。在台中は大学の語学センターで中国語を勉強。帰国後はフリーライター兼編集者として、台湾情報やインタビュー記事、子育てやビジネス関連の記事などを執筆。夫と娘二人の4人暮らし。


グローバルママ研究所

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。