2020.1.29

WorMo’的ワークスタイル

同一労働同一賃金で自由な働き方が可能に

オランダに見る理想のワークライフ・バランスとは

パートタイム勤務やワークシェアリング、リモートワークなど、自由な働き方が浸透し、「ワークライフ・バランス先進国」ともいわれるオランダ。その背景には、正社員でもパートタイムでも給料は同じという「同一労働同一賃金」の原則や、仕事よりも家族との暮らしを大事にする価値観が根づいています。自分に合った働き方を選び、子育ても夫婦で分担しながら幸せな家庭を築いているオランダ人の理想的なワークライフ・バランスとは? 世界各国の働き方をご紹介する連載の第6回目です。

総労働者数の38%が
パートタイム勤務
1980年代、俗に「オランダ病」と呼ばれる不況にあえいでいたオランダ。国内産業が国際競争力を失い、失業率は14%に達しました。しかし、1982年に「ワッセナー合意」が政労使の代表者間で結ばれ、経営者が求める賃金抑制と、労働者が望む労働時間短縮、そして政府による減税が同時に進められることになり、状況は改善に向かいました。 今やオランダでは「同一労働同一賃金」の原則が行き届いており、正社員、パートタイムといった働き方の違いに関わらず、同等の賃金と福利厚生が保障され、キャリアを積むことができます。その結果、ワークシェアリングやリモートワークなども進み、大不況から抜け出すことができました。
OECD(経済協力開発機構)の2018年のデータによると、オランダでは労働時間が週30時間未満のパートタイム勤務者が総労働者数の38%にも上っています。男女別に見ると、男性は19.2%、女性は58%がパートタイム勤務を選択。週に3~4日しか働かないというケースも珍しくありません。 また、業務委託という形で企業と契約を結ぶ個人事業主が総労働者数の16.7%を占めるなど、雇用形態も多様化しています。会社に雇用されるのではなく、個々の契約に応じて仕事を請け負うため、複数の会社で仕事をすることも可能です。
在宅勤務などのリモートワークを選択し、プライベートとのバランスをとりながら働く人も増えています。「今日は会議があるから出社する」「子どもの具合が悪いから、今日は家で仕事をする」というように、その日の状況によって柔軟に対応できるので、ワーキングマザーにとっては特にありがたい制度だといえるでしょう。
ワークシェアリングも浸透しており、たとえば学校の先生でも週5日勤務する人は少ないため、各クラスに担任の先生が二人ずついて、曜日によって先生が変わります。「学級運営や授業内容に支障が出るのでは…」と心配になりますが、むしろ違った目で生徒を見てくれるといったメリットのほうが大きいようです。
家族の幸せを後押しする
「1.5モデル」とは
このような自由な働き方ができるようになるにつれ、それまでは子育てのために家庭に入らざるを得なかった女性たちが積極的に社会進出するようになり、女性の就労人口も増加しました。
ヨーロッパでは男性と互角にバリバリと働く女性も多いので、「共働き」というと働き手も収入も2倍になるというイメージがありますが、オランダはもともと家族を大事にする国民性のため、政府は「1.5モデル」を推奨しています。これは、夫婦二人で1.5人分働き、残りの0.5人分の時間と労力は家庭のために使おうという考え方で、特に子どもが小さいうちは仕事をセーブして、子育てに時間をかける人が多くなっています。週3~4日勤務で、休みの日は子どもと過ごすという男性も多く、平日の公園では子どもと遊ぶ父親の姿をよく見かけます。父親が保育園や学校の送迎をするのも当たり前の光景です。残業もほとんどなく、夕方6時頃には家族そろって食卓を囲むなど、日々の暮らしのさまざまなシーンから、幸せな家庭の様子が伺えます。
人によって勤務日数が違うため、有給休暇は週の労働日数×4と規定されています。たとえば週4日勤務なら、年に16日間の有休を取れるというわけです。これとは別に傷病休暇も認められており、病気で休む場合は有休を使わなくても給料が保障されます。
そのため、有給休暇は純粋に楽しむために使われることが多く、長期の旅行に出かけるのが一般的です。オランダは雨が多いなど気候があまりよくないので、近隣のヨーロッパ諸国の暖かい地方にバカンスに行くのが人気です。キッチン付きの宿で自炊をしながらのんびりと過ごす人も多く、子どもとペットと自転車を車に乗せ、家族で気ままな旅をするというのがオランダの休暇のイメージです。
子育てと仕事、
両方楽しめるのが理想のバランス
女性の産休については、産前6週間産後10週間は有給の休暇が認められています。その後は育休(週の労働時間×26)を取ることもできますが、無給のため、産休明けに復職する女性が多いのが実状です。
産後10週で復職というのは、1年間の育休が認められている日本人からすると、ちょっと大変そうな気もしますが、そこは自由な働き方が主流のオランダ。自分が働きやすいような形での復職が可能です。たとえば、まずは週2~3日働いてみるとか、1日数時間だけ働くとか、とりあえず自宅でできる仕事から始めるなど、子育てと両立しやすい働き方を選べるので、自分にも子どもにもあまり負担がかかりません。むしろ、常に子どもの世話だけに追われ、社会から隔絶された「密室育児」に陥りがちな日本の状況を考えると、「赤ちゃんのお世話をしながら、ときどき働く」というスタイルはワーキングマザーの理想ともいえそうです。
男性の場合は、2日間の産休(有給)と3日間の育休(無給)が認められています。オランダでは自宅出産する人も多く、病院で産む場合でも大抵は1~2日で退院するので、男性も休みを取って産後の妻や子どものケアを積極的に行います。また、オランダでは産後、赤ちゃんのお世話や簡単な家事をしてくれる「クラームゾルフ」(産褥期産後ケア専門の看護師) さんのケアを受けることができます。自宅にクラームゾルフさんがやってきて、さまざまな雑事をこなしながら、赤ちゃんとの暮らし方やお世話の仕方を指導してくれるのです。産後8日間は費用も保険でカバーされます。
このクラームゾルフさんが、新米パパもしっかり指導してくれます。おむつの替え方やミルクのあげ方などを教え、母親だけに負担がかからないよう、「夜はパパがミルクをあげて」とか「ほら、泣いているから抱っこしてあげなきゃ」というように、父親の育児参加を促してくれるのです。こうして自然と「夫婦で一緒に子育てをする」スタイルができあがっていくわけです。
このように、仕事も子育ても無理なく両立させることのできるオランダの働き方は、ワーキングマザーにとってはもちろん、男性にとっても理想のワークライフ・バランスといえるのではないでしょうか。

斉藤悠子

グローバルママ研究所リサーチャー。出版社勤務を経て、2009~2015年まで台湾・台北に在住。在台中は大学の語学センターで中国語を勉強。帰国後はフリーライター兼編集者として、台湾情報やインタビュー記事、子育てやビジネス関連の記事などを執筆。夫と娘二人の4人暮らし。


グローバルママ研究所

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。