2020.1.8

WorMo’的ワークスタイル

残業ゼロでも労働生産性は高い!

自由な働き方でプライベートも充実のデンマーク

フレックスタイム制が浸透し、夕方5時前に帰宅ラッシュのピークを迎えるデンマーク。週37時間勤務で残業もほとんどなく、有給休暇は年5~6週間というゆとりのある働き方をしながらも、労働生産性は日本を上回るという驚きの結果が報告されています。また、仕事においても家庭においても男女平等の意識が強く、女性が働きやすい国としても知られています。家族の時間を大事にし、メリハリをつけた働き方で成果を上げるデンマークの人々の暮らしぶりとは?世界各国の働き方をお届けする連載の第4回目です。

働く時間が
日本より300時間も少ない!?
OECD(経済協力開発機構)が毎年発表している世界各国の労働状況に関する国際統計データによると、2018年のデンマークの年間平均労働時間は1,392時間。主要38か国中37位となっており、他の国々よりも働く時間が短いことがわかります。これに対し、日本は1,680時間(22位)で、約300時間もの差があります。 デンマークの法定労働時間は週37時間で、残業もほとんどありません。時間外労働手当が賃金の150~200%と定められているため、企業も残業や休日出勤を推奨せず、仕事は決められた勤務時間内に終わらせるのが当然と考えられているのです。
また、ほとんどの企業がフレックスタイム制を導入しており、出社や退社時間は個人の裁量に任されています。タイムカードなどによる管理もなく、自分のライフスタイルに合わせた自由な働き方が可能です。たとえば、出勤前にスポーツジムに寄る人もいれば、早めに退社してビジネススクールでスキルアップを図る人もいます。夫婦で出勤時間をずらして、父親が子どもを保育園に送ってから出勤し、母親は早めに退社してお迎えを担当するといった家庭もよく見られます。
帰宅ラッシュのピークは、なんと15時半~17時。保育園も17時に閉園するので、16時前後にお迎えに行くのが普通です。18時頃には家族みんなが帰宅して、一緒に夕食をとるというのが、デンマークのスタンダードな暮らしなのです。
有給休暇は年に5~6週間で、多くの人は夏に連続休暇を取ります。特に子どもがいる家庭では、夏休み(6月下旬~8月中旬)に長期休暇を取って家族旅行をしたり、夫婦で時期をずらしたりして休暇を取得し、子どもの面倒を見るのが一般的です。そのため、7月はオフィスが閑散としていたり、1~2週間休業するという会社もあったりしますが、ヨーロッパでは夏休みは働かないという意識があり、仕事が進まなくても「サマーバケーションだからしょうがない」という感覚があるようです。
これほど労働時間が少ないにもかかわらず、労働生産性は高水準を維持しています。OECDの調査結果(2018年)を見ると、デンマークの一人当たりGDPは55,138ドルで第9位、時間当たり労働生産性は77.1ドルで第5位となっています。これに対し、日本は一人当たりGDPが42,823ドル(19位)で、時間当たり労働生産性は46.8ドル(20位)。長時間働いているにもかかわらず、労働生産性はデンマークより低いという驚きの結果となっているのです。
メリハリをつけた働き方が
生産性を高める
そもそも、仕事量が多くて定時までには終わらないというのが、多くの日本人の実感ではないでしょうか。しかし、デンマークでは、勤務時間内に仕事が終わらないのは、仕事のやり方が悪いか、能力不足だと考えられており、部下が時間内に仕事を終わらせられるよう指導するのも上司の仕事となっています。より効率的なやり方を探ったり、個々のスキルアップを図ったりすることが求められ、それでも終わらなければ、その仕事には不適任とみなされ、職種替えや解雇となる場合もあります。
こうした背景もあり、就職してからもスキルアップのための勉強を続ける人が大勢います。アフターファイブに社外の講習やビジネススクールに通う人も多く、会社も必要に応じて費用を補助するなど、積極的にサポートしてくれます。大学や大学院に戻って学び直すという選択肢もあります。デンマークでは大学を含むすべての教育費が無料なうえに、大学で学ぶ人には政府から生活費として毎月約12万円が支給されます。ですから、いったん就職して職業経験を積んだ後に大学に行く人も多く、大学のキャンパスにはさまざまな年代の人がいます。本格的に社会に出て働くのは20代後半になってからということも珍しくありません。
また、IT企業などでは在宅勤務も一般的で、会議など必要なときだけ出社し、あとは家で仕事をするというケースもよく見られます。自宅が会社から遠く、通勤に1時間半以上かかるような場合は、週2~3日出社して、あとは自宅勤務というように、より効率的な働き方ができる環境が整っているのです。
このように、会社での拘束時間が短いから、スキルアップのために時間を費やすことができ、それによりますます効率よく働けるようになる。その結果、短時間で高い生産性を上げることができるのでしょう。メリハリのある働き方が好循環を生み出しているのです。
男女平等で、
育児休暇も夫婦で分担
デンマークの男性は、家事も育児も積極的にこなします。料理や掃除などはできる人がするのが当然という認識で、料理が苦手なら後片付けを引き受けるというように、夫婦で自然に分担しています。曜日ごとに料理担当を決めているという家庭もよく見られます。 ただし、昔からそうだったわけではありません。歴史を紐解くと、50~60年ほど前までは専業主婦が多く、男性は外で働き、女性は家事を担うというのが一般的でした。1960年代になってから、外に出て働く女性が増え始め、それとともに仕事と家事の二重負担が問題になりました。そして、平等な権利を求めて女性たちがさまざまな運動を起こした結果、男女同一賃金や育児休暇などが法で定められるようになり、徐々に男女平等が実現していったのです。
子育てへの関わり方も男女平等です。子どもが生まれてから2週間は男性も必ず育児休暇を取り、産後の妻をサポートしながら赤ちゃんのお世話をします。男性がベビーカーを押して買い物をするといった微笑ましい姿もよく見かけます。
その後は1年間認められている育児休暇を、夫婦で分けて取るのが一般的です。たとえば、最初の半年は妻が休み、妻の復職後は夫が半年間の育休を取るとか、妻が10か月休んで、残りの2か月は夫が休むなど、家庭の事情に合わせた育休取得が可能なのです。家計のことを考え、収入の高いほうが短い育休で復帰する場合が多いのですが、稼ぎの多い男性でも最低2~3か月は子育てをしたいとの思いがあるようで、育休期間は女性が7割、男性が3割程度という家庭が多いようです。
最近、日本では「パタハラ」(パタニティ・ハラスメント=育休を取る男性への不当な扱いや嫌がらせ)という言葉が聞かれるようになりましたが、男性の育休が当たり前のデンマークではこうした事態はあり得ません。男性でも女性でも気兼ねなく休むことができ、復職後は当然、同じポジションに戻れます。このように、余計なストレスを感じずに休めるからこそ、メリハリのついた働き方が可能なのかもしれません。
デンマークの人々は、家族と過ごす時間が何よりも大事と考えています。帰宅後は一家だんらんの時間をゆったりと楽しみ、長期休暇は家族旅行でリフレッシュする。子どもができれば子育てに専念する時間をきっちりと確保し、子どもが小さいうちは夫婦で分担して世話をする。こうしたゆとりのある暮らしが仕事へのエネルギーとなり、短時間で集中して生産性を上げることができるのではないでしょうか。
「仕事があるから休めない」ではなく、人生にゆとりを持つためにどういう働き方をすべきなのか。デンマークの事例をもとに、ぜひ考えてみてください。

斉藤悠子

グローバルママ研究所リサーチャー。出版社勤務を経て、2009~2015年まで台湾・台北に在住。在台中は大学の語学センターで中国語を勉強。帰国後はフリーライター兼編集者として、台湾情報やインタビュー記事、子育てやビジネス関連の記事などを執筆。夫と娘二人の4人暮らし。


グローバルママ研究所

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。