2014.8.8

こどもの可能性を拡げる情報

佐藤蕗さんのおもちゃづくりで笑顔を増やす

自分もこどもも楽しい育児を

「息子をとにかく笑わせたい」。佐藤蕗さんのおもちゃづくりの原点は、とてもシンプルだ。お風呂に入るのが楽しくなるお風呂グッズや歯磨きを理解する為のカバのおもちゃから、こども用の冷蔵庫、郵便ポストや信号まで、佐藤さんの自宅はユニークな手づくりおもちゃであふれている。テレビや雑誌などでも活躍中の佐藤さん。今回は、Wor’Moが東京都港区と共催したワークショップの様子を取材し、佐藤さんにおもちゃづくりや子育てについてお聞きした。

『しましまトリオ』をみんなで製作
今回のワークショップで製作するのは、佐藤さん考案の『しましまトリオ』。お風呂に入るのを嫌がる息子さんをお風呂場に誘導するためにつくったおもちゃだ。港区の港南こども中高生プラザ「プラリバ」で開催されたワークショップには、生後8ヶ月から1歳1ヶ月の乳児とお母さん24組が集まった。
つくり方は簡単。空のペットボトルを用意し(“トリオ”にする場合は3本)、底面にキリで5、6個穴を開け、ビニールテープをぐるぐると巻いていくだけ。最後に、お手製の顔のデコシールを貼れば、お風呂大好き『しましまトリオ』の完成だ。
実はこのおもちゃ、底面の穴にヒミツがある。ペットボトルの中に水を入れると、穴から水がシャワーのように出てくるが、ペットボトルの口を手やキャップでふさぐと、ピタッと水が止まるのだ。これが、こどもにはおもしろくてたまらない。「しましまトリオがいるよ」と言うと、苦手なお風呂にも足が向く。
蕗さん作の『しましまトリオ』大きさも、形も様々だが、みな底に穴が開いている。
『しましまトリオ』からのメッセージ。これをお風呂に貼るのも効果的だそう。
今回のワークショップでは、穴の開いたペットボトルやビニールテープ、佐藤さん作の目や口になるデコシールなどの素材があらかじめ準備されていた。参加者は、ビニールテープを手に、思い思いの色やデザインでペットボトルを飾っていく。お母さんたちが熱中している様子を見て感じ取るのか、こどもたちも楽しそうにあそんで待つことができた。
佐藤さんのアドバイスやヘルプもあり、個性豊かな作品が15分ほどで完成。お母さんのお手製おもちゃを手にし、こどもたちにも笑顔があふれた。ワークショップ後のアンケートには、「おもちゃをつくるのはとても楽しかった」、「すぐつくれるのでまたやってみたい」という声が多く寄せられた。
お母さん一人ひとりの個性豊かな作品が出来上がっていく。
出来上がった『しましまトリオ』を観察するお子さん。
育児の困りごとを楽しく解消
佐藤さんがおもちゃをつくり始めたのは、現在3歳になる息子さんが生まれてから。多摩美術大学卒業後、建築やデザインの仕事をしていた佐藤さんは、アクセサリーやモビールなど身の回りのものを手づくりするのが好きだった。
「こどもが生まれて、こどもって面白い!こんなにおもしろい対象はない、と思いました。趣味のものづくりの延長で、自然とおもちゃをつくるようになりました」
おもちゃのアイデアは、こどもの動きや反応を観察しているなかで沸いてくるという。
「息子を見ること、観察することでネタ探しをしています。こどもって、ある時期に“何か”にものすごくハマることがありますよね。あの行動は、発達するうえで意味があることで、“今、やりたい”というこどもの意欲を逃さないことが大事なのではないかと思います。でも、実際はされたら困ることや危険なことも多いので、それを自由に思う存分させてやるためにつくったおもちゃもあります。それに束の間でも集中してあそんでいてくれると、その間親もほっとひと息つけるので助かります」。
たとえば、息子さんがつかまり立ちを始めたころ、家具のすき間にあらゆる物を入れて困っていた。そこで佐藤さんは、息子さん用に差し込み口のあるポストを製作。すると、案の定、息子さんはそこにいろんなものを入れて楽しんだ。
また、お風呂を嫌がるときには、前述の『しましまトリオ』や『お風呂シール』、歯磨きを嫌がるときには『ハミガキかばくん』、電車でのぐずり対策には手袋型パペット『とりさん(1号〜3号)』など、こどもの成長に合わせた困りごと解消のために、開発したおもちゃも多い。
つくったら「ものすごくはまったから、私も楽しくなっちゃった」と蕗さんの言うポスト。
これもお風呂いやいや期の対策に。
大きく口を開けて歯を磨いてもらう『歯磨きカバくん』は、牛乳パックからできている。
『とりさん(1~3号)』はどんどん増えて今は4羽いる。電車でのぐずり対策に。
「育児は困りごと、悩みごとの連続ですが、どうすればそれを楽しく解消できるかを考え、おもちゃを製作し、息子の反応を見るのがおもしろいんです。おもちゃづくりは、私にとって育児ストレスの発散方法なのかもしれません。育児って大変ですから、自分が“楽しい”と思えることに引き寄せてしまえばいいのかなと思います。私の場合はものづくりですが、オシャレが好きな人ならこどもとファッションを楽しむのもいいですよね。ワークショップでは、そのアイデアをみなさんと共有できるといいなと思っています」
大切なのは、親自身が楽しむこと
こどもの成長に伴い、佐藤さんと息子さんの関係も少しずつ変わってきた。
「1歳頃までは、私が作ったおもちゃに対して、予想通りの反応をしてくれていたんです。“やっぱり、それ好きでしょ!”とこちらも快感でした。そのうち、だんだん行動が読めなくなってきて、“お、そういうふうにあそぶんだ!”と、私が意図したあそび方ではなくて驚かされることも増えてきました。3歳になった今では、息子からつくってほしいとリクエストされることもあります。そうなると、“よし、待ってろよ。今つくるからね!”と、私にスイッチが入ってしまうんです」。
最近、息子さんのリクエストに応えてつくったのが、「こどもジブクレーン」。何かをひっかけたり釣り上げたりしてあそぶものだが、息子さんはこれを使って地面に絵を描いたそうだ。
また、おもちゃのアイデアは、ご主人(面白法人カヤック・佐藤ねじさん)との会話から生まれることもある。子育ての悩みを相談したら、「じゃあ、こういうのつくってみたら?」とアドバイスされることもある。共同で企画・製作した作品もあり、なかでも「小鼓パンツ」は、こども用パンツのおしりの部分にセンサーを取り付け、小鼓のようにたたくとポンと太鼓の音が出るというユニークな作品だ。
「夫は、思いついたらどんなことでもやってしまう人なので、私もいっしょに楽しんでいます。つくった手づくりおもちゃが増えてきたときに“どうせならインターネットで発表したら?”とアドバイスをくれたのも夫です。夫の息子との接し方がとても面白いので“負けるか!”と夫婦で競い合っている感じです」。
蕗さんのお子さんのリクエストによる作品。
こどもを肩に載せてあそんでいる姿から生まれた作品。
おもちゃづくりはライフワーク
佐藤さん自身も、ワーキングマザーとして、こどもを保育園に預けて仕事をしている。
「自分のやっている育児が良いか悪いかなんて、こどもが大きくなるまでわかりません。大きくなっても、何が正解だったかなんて、わからないものだと思います。答えやゴールがないからこそ、今、目の前にいるこどもとしっかりと向き合うことしかできないなと私は思っています」
とはいえ…、と続ける佐藤さん。
「私も、イライラしてしまう日はあります。よく、怒らなさそうとか、のびのびと育児をしてそう、とか言われますが、そんなことはありません。息子に八つ当たりしてしまい、反省することもあります。ただ、なるべくそうしたくないので、いろいろ工夫していて、おもちゃづくりはそのひとつです。育児ストレスのエネルギーを作品に向けることで、中和しているのかもしれません」。
「こどもがおもしろがるポイントさえつかめていれば、見た目が多少悪くても、こどもは楽しくあそんでくれますよ」と佐藤さん。
こどもが笑うと、お母さんも笑顔になる。お母さんが笑顔だと、こどもも楽しい。だから、おもちゃをつくる。佐藤さんにとってのおもちゃづくりは、大好きなものづくりの一環であり、こどもとのコミュニケーションツールであり、育児の楽しみと同時にストレス発散の行為でもあり、まさに、ライフワークなのだ。
 
WorMo’では、佐藤蕗さんにあそびのレシピをつくってもらいました。お母さんがつくるものだけでなく、お子さんがつくる物もありますし、まったくつくらないあそびもあります。どれも、毎日がちょっと楽しくなるそんなレシピです。是非、あそんでみてくださいね!
そして、あそびのレシピは今後も増えていく予定です。お楽しみに!
佐藤蕗レシピ一覧

佐藤蕗(さとうふき)

1982年生まれ、愛知県出身。多摩美術大学卒業後、店舗デザイン事務所、建築設計事務所などに勤務。第一子出産を機に、おもちゃづくりを開始。2012年「NHKすくすく子育てアイデア大賞2012」最終審査ノミネート、2013年野村不動産「笑顔をつなごうフォトコンテスト」優秀賞受賞。2014年NHK Eテレ「まいにちスクスク ママの手づくりおもちゃ」出演。現在は、雑誌やテレビで活躍するほか、おもちゃづくりのワークショップなども多数開催している。
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文/撮影 笹原風花