2014.6.10

こどもの可能性を拡げる情報

超人気プロ家庭教師に聞く伸びる子の育て方

勉強好きな子の共通点/こどもの素質を伸ばす方法

教育は大事なもの。漠然とそう感じていても、なぜ教育が必要で、何のために教育を受けるのかを改めて考える機会は少ない。15年にわたって受験生を指導してきた安浪京子さんは、「教育とは、こどもの素質を伸ばし、生きる力や知性を伸ばすためにある」という。塾講師やプロ家庭教師として長年中学受験業界に携わってきた教育のプロフェッショナルであり、現在は3歳の子のお母さんでもある安浪さんに、自ら学び考える力を持つ『伸びる子』と、その家庭に共通するルールについて教わった。

『伸びる子』は一瞬でわかる
中学受験業界を15年にわたり見てきた安浪さんは、その経験から「学歴がすべてではない」と明言する。
「中学受験の良い結果だけではなく、たくさんの悲劇を見てきて感じる最も重要なことは、そのこどもにあった教育をして、知恵や知性を含めた“生きる力”を身につけること。社会の一員としてきちんとした振る舞いができ、幸せを感じて日々を過ごせる人になることなのです」
そう感じながら指導にあたるうち、偏差値では計れない、生きる力の強い『伸びる子』がいることに気がついた。多くの子どもたちを指導してきた安浪さんは、『伸びる子』かどうかは、会話をすれば、一瞬でわかるという。
「大人に対してきちんと敬語を使えて、けじめある態度がとれる子は、伸びます。これは、まさに親の影響が大きい部分ですね。挨拶や礼儀、感情のコントロールといった、人としての基本がきっちりしているご両親のお子さんは成長する傾向があります。その場の感情にあわせて、がみがみと叱り付けるような家庭では『伸びる子』は育ちません。挨拶や礼儀は親の姿を見て覚えるのでしょうね。
また、そういったお子さんは総じて、たいてい机の上がきれい。整理整頓されていて、余計なものやキャラクター文具が少なく、まさに勉強する空間。片付けできるかどうかは、あそびと勉強の時間を切り分ける精神力にもつながっているのでしょうね」。
そう話す安浪さんは、長年の指導を通じて、『伸びる子』に共通する2つの資質に気づいた。
ある日突然、グッと成長する『伸びる子』に共通する2つの資質
「『伸びる子』は皆、必ず『素直』で『集中力』 があります。そして、この2つは、生まれ持った性格も多少ありますが、本来どんなこどもも備えていて、親や周りの働きかけによって引き出すことができるのです。
まずは集中力。これは、親が真剣にこどもの話を聞く習慣があるか否かがとても大切です。親が真剣に向き合えば、こどもも真剣に集中して話をするようになります。また、将棋や積み木といったあそびや、おもちゃを最後のひとつまできっちり箱にしまうといった作業で養えますので、こどもが途中で投げ出しても必ず最後までさせることが大切です。スポーツや将棋といった部活動や習い事など、ひとつのことを徹底的に極めることも有効ですね。何かを極めた子は成績もいいといった好例もよく聞かれます。おけいこ事も、もちろん本人が興味を持っていることが大切ですが、最初はつまらなくても続けているうちに技術が身について楽しくなってきます。一旦始めたら、こどもに興味がないからといって、すぐにやめさせないことが大切です。
非常に集中しているように見えるテレビゲームには要注意。これは中毒状態のようなもので、刺激に反応しているだけ。集中力を鍛えることにはなりません。テレビやスマートフォンといったデジタル機器の使用をゼロにするのは難しくても、家庭内でルールを設け、厳格に守り抜くことが必要でしょう。
続いて、素直さ。こどもにとって、つらいことである勉強をするには自制心が不可欠ですが、それを身につけるためには、要所で保護者の言葉にきちんと耳を傾ける素直さが必要です。
素直さについては、集中力以上に、持って生まれた気質だと考えがちですが、実は保護者との信頼関係の上によるところが大きいと感じます。常日頃から、こどもと親が対話し向かい合うのはもちろんのこと、きちんとしたしつけがなされているかは重要なポイントです。大人が一方的にこどもを従わせるのではなく、家庭内で明確なルールを定めて、その理由をきちんと説明し、それを貫く。『何をルールにするか』よりも『変えないこと』に重きを置いてしつけする。そんな親の厳格さは、親子間の信頼を深めます」。
資質が重要だとわかっても、生まれ持ったものだとしたら、今から伸ばすことは出来ないと思いがちだが、そんなことはないと安浪さんは言う。そこで、引き続き、わが子を『伸びる子』にするための指導法や接し方など、3つのポイントを伺った。
家庭に入って指導をする家庭教師だからこそ、見えてくる家庭単位でのこどもの育ちを語る安浪さん。
わが子を『伸びる子』にするための3つのポイント
『伸びる子』に共通する2つの資質。その資質を伸ばすために、できる3つの子育てのポイントがある。
(1)自ら考えるように質問を仕向ける
「こどもが何か行動を起こしたら、深堀りして、考えさせる質問をします。うちの子はいま3歳ですが、絵を描いたら『ここだけ緑色なのは、どうして?』と。するとこどもは、無意識にやっていたことでも、ちゃんと考えて答えます。
これは、就学して対象が勉強になっても同じ。家庭教師をしてきた中では、答えが合っていても間違っていても『なぜそう考えるの?』と聞いて、プロセスを説明させてきました。そうすることで考える力が伸びるのです」。
安浪さんの話し方は、大人に接するときと変わらない。それは、過剰なこども言葉も不要だと考えているからである。あまりに難解な単語は、理解できるよう噛み砕いて表現をすることも必要だが、こどもは文脈で文章を理解しようとする。ことばも触れることで慣れていくもの。語彙を増やすチャンスを奪うことになりかねないのである。「例えば、私が教える小学生の場合では、『それって軽率だよね』『まさに無知の知だね』などと話すと『軽率ってなに?』『無知の知って?』と聞いてきます。そのときに噛み砕いて説明をし、どういうときに使えるか思い当たることを話させます」。
(2)こどもを伸ばす「叱り方・ほめ方」
指導において「叱り方・ほめ方」は、非常に重要なポイントだ。安浪さんはその2つを使い分け、意欲を引き出したり感情をコントロールしたりしてきたという。
「どんなタイプのこどもであっても基本の叱り方を変える必要はありません。叱るときは、冷静にビシっとダメな理由を説く。こどものプライドは尊重して、怒鳴り散らすような態度は言語道断。最後に『こうしてほしかったな』という思いや解決策を伝えて緊張した空気を緩ませたら、それでさっぱり終わりにします。基本的に5分以上叱ることはありません。
一方、『ほめ方』や『ほめどころ』は、その子によって異なります。頭の回転が早く賢いタイプは、ココ!というポイントを的確にほめた方が効果はありますし、ほめすぎると、わざとらしいと思われて信頼を失うことがあります。逆に、自信がないタイプは、ちょっとしたことでも大げさにほめて乗せてあげると、調子が上がります。どちらのタイプにも有効なのは、人前でほめること。自尊心をくすぐられるのでしょうね」。
さらに、もう一つテクニックがあるという。「もちろん、2人のときにボソッとほめるのもいい手です。何気ないひと言でほめられると『いつもそう思ってくれているんだ』と心に染み入ります。うちの子はまだ3歳ですが、片付けやお手伝い、自分で服を着たときは毎回『えらいね~』を連発し、少し先を行く行動を起こしたときは『天才!』を連発します」。
(3)教えないことはできるわけがない
「以前小学校高学年の子の保護者が『うちの子は蝶々結びもできないんですよ~』と、口にしていたことがありました。よくよく聞くと、ちゃんと教えていなかったのです。どんなことでも、こどもが勝手にできるようになるわけはありません」。
「こどもが新しい知識やワザを習得するには、ステップを踏んで、きちんとした指導が必要なのです。これも以前教えていた家庭での話しですが『うちの子は、教えていないのに、九九や百人一首を3歳のときにぜんぶ言えたの♪』なんてお母さんがいました。でも、こどもがひとりで勝手に言えるようになるわけないですよね。絶対、親が教えていますから(笑)ただ、お母さん自身が、好きでやっていたり、当たり前のように考えているだけで、こどもに覚えさせよう、教えようという意識を持っていないだけなのです。
知識の習得でのステップで言えば、絵本の片付けひとつをとっても、幼いこどもなら、まずは『背表紙を向けて棚に入れる』ことから始め、次に『高さ別に並べる』と、できることをひとつずつ増やしていく。それぞれ1週間くらいづつは、それだけを行います。成長が進んだら『どういう風に片付けたらキレイに見えるかな?』というように自分で考えながらやるよう導いていく。そうすれば、どんなことでも必ずできるようになりますよ」。
お片づけもいきなりすべてを要求しない。背表紙を向けて棚に入れることからはじめ、徐々にステップアップしていく。
『伸びる子』の家庭に不可欠な条件
中学受験の算数に特化した家庭教師派遣の会社を経営する安浪さんもまた多忙な毎日だ。しかし、大切にしていることがある。それは、『伸びる子』を育てる上で、前述の3つのポイント以上に大事なことである「こどもといっしょに過ごす時間を持つこと」だという。
「仕事や家事でいそがしくても、こどもが話しかけてきたら家事の手をいったん止めて話を聞く。お休みの日は家族揃って出かける…そういった小さな積み重ねとあたたかなまなざしが親子の絆を強め、成長の土台になると思っています。
親子は密接な関係なだけに、難しいこともたくさんあります。第三者の言うことは聞けるのに親の言葉は受け入れられない…なんてことも先々には起こるでしょう。でも、親にしかできないこと、親だからできることがあります。他の家庭と比較したり、情報に翻弄されるのではなく『うちはうち』と自信を持って、育児に臨んでくださいね」。
長年の受験指導で多くの家庭を見てきた安浪さんだからこそ、気づいた『伸びる子』を育てる家庭の条件。当たり前に見えることを意識して実行するだけで、大きくこどもが変わるとしたら実行しないわけにはいかない。
「忙しくてもこどもとの時間を濃密にするように心がけている」と言う安浪さん。
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安浪京子

算数教育家。一児の母。神戸大学発達科学部卒。「浜学園」「早稲田アカデミー」「サピックス」で算数講師を務め、高い支持を得る。プロ家庭教師歴15年、個別に100名以上の家庭を指導。その経験をもとに、2011年、中学受験算数を専門としたプロ家庭教師集団プレステージパートナーを設立、毎年多数の合格者を輩出。2013年より朝日小学生新聞にて受験算数の連載とビデオ講義を担当。2014年には、一般社団法人 日本女性起業家支援協会主催の女性起業家×企業・メディア マッチングプレゼンテーションでグランプリを受賞し、女性起業家としても注目を浴びる。そのほか、気象キャスターとしてもテレビやラジオ等幅広く活躍し、気象教育の啓発活動にも携わっている。

文/田中社(田中青佳) 撮影/石河正武