2017.11.29

こどもの可能性を拡げる情報

後編)2018年度から小学校英語が変わる

日本の英語教育は「使って身につける」時代へ

前編では、現在小学5、6年生を中心に行われている「外国語活動」について、その意義や現状、2020年度(早い自治体では2018年度)に「英語」へと教科化される際の変更点などについて紹介した。後編では、2011年度からスタートした、「小学校英語」の成果は上がっているのか、中学校以降の英語教育とどうつながっていくのか、さらに、親として何ができるのかについて、引き続き、上智大学言語教育研究センターの藤田保教授に伺った。

自分の言葉で表現しようと努力することが、
こどものコミュニケーション力を伸ばす
「外国語活動」が本格的にスタートして、7年あまり。地域差はあるものの、全体的に成果は上がってきていると藤田先生は述べる。
「知識を覚えることを目的にはしていないので、数値的には表れにくいですが、中学校の生徒を見ていると、英語でコミュニケーションをとることに積極的で、英語を使うことへの抵抗感は確実に減ってきていると感じます。次期学習指導要領には、現行の高校に加えて中学校の英語の授業も英語で行う活動型を目指すよう明記されています。また、2020年に向けた大学入試改革も進んでおり、英語については、リスニングとリーディングが中心だったものが、スピーキングとリスニングを含めた4技能を測る試験へと変わります。活動重視の英語教育は小学校に限った話ではなく、中学校、高校、大学と日本の英語教育全体の変革の一環なのです」
日本の英語教育が変わることをプラスに受け止めつつ、自分たちが受けてきた英語教育とのギャップに戸惑う親も少なくない。我が子の英語への興味関心を引き出すにはどうすればいいかと思い悩む親もいるだろう。こどもと接する際には、どのようなことを心がければ良いのだろうか。
「まずは、思い込みを捨てて意識転換をすることです。先に述べたように、旧来の日本の英語教育は、とにかく知識を覚える、覚えてから使う、というものでした。それが今は、使いながら習得する、と変わってきています。こどもにも無理に知識を覚えさせようとしないことが大切です。小さいうちから詰め込みすぎてしまうと、早い段階で頭打ちになってしまうこともあります。楽しくやっているならそれでいいか、と気楽に見守っていた方がいいのです。
そして、これは英語に限ったことではありませんが、こどもの話を聞く、ということがとても大事です。1日5分でもいいので、『今日は何をしたの?』などと聞いてあげてください。こどもに関心を持っていることが伝わると、こどもは『伝えたい』という気持ちになり、自分の言葉で何とか表現しようと努力します。これが、こどものコミュニケーション力を伸ばすのに大いに役立つのです。先に述べたように、2020年には大学入試が大きく変わります。従来の知識偏重型ではなく、思考力、表現力、判断力が求められる問題へ、自分の頭で考えて自分の言葉で表現する問題へと変化します。2020年には今の中学3年生が、移行期間が終わる2024年には今の小学6年生が大学入試を迎えます。小学生・中学生の頃から自分の言葉で表現するという習慣がついていないと、結果的に大学入試でも苦労することになってしまうのです。
その際に気をつけていただきたいのが、『今日はどんな英語表現を勉強したの?』などと聞いてこどもが答えられなくても怒ったりしないこと。赤ちゃんが母語を覚える際には、大人の言っていることは理解できるが自分では言えない、という時期があります。これは沈黙期と呼ばれるのですが、言語習得には不可欠な時期です。インプットがある程度たまると、一気に言葉として出てくるのです。英語の習得も同じです。学校で先生が英語で出した指示は理解できても、こどもは同じことをまだ自分では言えません。『言えない=理解していない』ではないのです。英語の絵本の読み聞かせなども、たくさんの言葉をインプットするという意味ではとても大切です」
英語はコミュニケーションツール。
日本人が目指すべきはネイティブではない
今や日本国内にいても英語の必要性を感じるグローバルな時代になり、求められる英語力のかたちも変わってきた。私たち日本人が目指すべき英語はネイティブの英語ではなく、コミュニケーションツールとしての英語だと藤田先生はいう。
「日本人の先生ではなくネイティブの先生に教わった方がいいのではないか、と感じる保護者の方もいると思いますが、それは日本人の英語に対するコンプレックスの裏返しだと思います。『ネイティブみたいに発音できないから、文法が正しく使えないから、話すのが億劫…』という日本人が多いですが、世界を見渡してみてください。例えば東南アジアの国々を訪れても、街中では英語が通じます。訛りも強く文法も曖昧な場合が多々ありますが、通じます。そう、英語というのは自分の言いたいことを伝えるためのツールなのですから、通じればいいのです。ネイティブみたいじゃないからと気負うことなく、保護者の方もどんどん使ってほしいと思います。その姿が、こどもに『英語は使うものだ』、『英語を使ってみたい』、と思わせるのではないでしょうか」
早い自治体では来年度(2018年度)よりスタートする小学校高学年での英語の教科化に向け、現在、各社が小学校の検定教科書の制作に取り組んでおり、並行して小学校教諭の研修も進んでいる。急速に変わりつつある日本の英語教育、そして教育全体の大きな枠組みの中で、小学校英語の変化がこどもにどう影響を与えるか、今後も注目が集まる。

藤田 保

上智大学言語教育研究センター副センター長・教授。研究分野は応用言語学(バイリンガリズム)、外国語教育。小学校における英語教育をテーマとした研究・論文も多数あり、小学校教諭向けのワークブックの執筆や研修講師も務める。NPO法人小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)理事。

文/笹原風花 撮影/荒川潤