2018.10.22

WorMo’的ワークスタイル

制約があるからこそ必要なマネジメント視点

VOL.27 仕事の醍醐味はチーム目的達成

ダイキン工業株式会社 人事本部
ダイバーシティ推進グループ 担当課長
今西亜裕美さん
97年の入社時より人事本部に所属。社内イベント企画・運営や社内報編集にはじまり、出産後はプロジェクトベースの仕事を通して常に新しいことに挑戦し、2015年管理職に昇進。ダイキン工業は目下「女性活躍推進プロジェクト」を遂行しており、女性社員を取り巻く環境は大きく変わりつつある。女性活躍を推進する側でありながら、10歳男児と7歳女児のワーキングマザーとして、それら施策を利用する側でもある今西亜裕美さんにお話を伺った。

育休復帰タイミングで仕事が大きく変化
慣れない仕事と子育ての両立に悩む日々
「育児休暇復帰後は、とてもハードでした。1年休んだことで“浦島太郎状態”だったうえに、復帰のタイミングで仕事内容が大きく変わったんです」と語る今西さんは、育休復帰を機に、約10年間担当していた社内イベントの企画運営や社内報編集から、新しく立ち上がったプロジェクト担当に仕事が大きく変化。復帰一週間前に当時の担当役員(現社長)から「成長のためにも、このタイミングで思い切って仕事を変えた方がよい」との指示があったのだ。そろそろ仕事を変えてステップアップしたいと思っていたものの、復帰が近づくとやはり同じ仕事の方がいいかなと揺らいでいた時期だったため少し不安を感じていた。
「新しい仕事はそれまで経験したことがなく、社内でも初めて取り組むプロジェクトで、各部門から抵抗もあるようなハードなテーマ。プロジェクトだからルーティンワークより融通が利きやすく、子育てが大変な中でも取り組みやすいだろうという話でしたが、実際はとても大変でした」
復帰時は「短時間勤務制度(10時開始の6時間勤務)」を利用。これまでは残業があたりまえだったが時短勤務では毎日6時間しか働けない。「必要な時はもちろん、残業もしますが、毎日バタバタと会社を飛び出し、走ってこどものお迎え。仕事をやり残した感はあるし、こどもに対する申し訳なさもある、家のことも気になる…「自分の思い通りに仕事ができないことがもどかしく、一番しんどかったです。『働き方』を見直さなければまったくもって無理だなと」
「時間を意識した成果」に重視した
働き方の見直し
「中途半端な自分を変えるために、まず意識したことは「メリハリをつける」こと。こどもを保育園に送りとどけたら、すぐに頭は仕事モードに切り替えて一日の段取りを考える。出社時間が遅い分、会社に着いたらすぐにスタートダッシュが切れるよう電車の中で新聞や資料に目を通すなど、気持ちの切り替えをスムーズにするために、自分なりのルーティンをつくりました。また、やるべきことの優先順位を常に意識し、『今日絶対やる』と決めたことは必ず上司に見せられるカタチまで仕上げる。保育園から発熱の呼び出しがあるのは、たいてい15時ごろ。だから急ぎの仕事は15時までに終えるつもりで取り組むなど、とにかく『時間内で結果を出すこと』を心掛けました」
「メンバーや上司と課題や目的、アウトプットについての意識合わせをしたら、作業に取り掛かり、進捗6割くらいの段階で再び確認し合い、ギャップがあれば修正。そして最終ゴールにもっていきます。育児で時間がないから、といってルーズになってはいけない。仕事の仕方を工夫して、自分の仕事は必ずやり遂げる気持ちで、早く退社する時は自分の進捗をメンバーと共有し、あと何をしなければいけないか状況の共有を心がけました」
そういうことを繰り返すうち、限られた時間でも内容の濃い仕事ができ、質も以前よりアップしたと感じているという。もちろんこのやり方が毎回うまくいくわけではなく、やり直しが発生すること、提案が通らないこともある。しかし、「何としてでもやり遂げるぞ! という気概で挑んでいます。今はとにかく悩んでいる時間はないので、『やるか』『やらないか』を即座に判断し、『やる』と決めたら、『どうすればできるか』と、考えるようになりました」
上司のアドバイスとチームの成功体験から
得られたマネジメント視点
「新しい仕事、そして限られた時間で働くなかで、プレッシャーやジレンマで押しつぶされそうになりながら “こなす”ことに精一杯だった時期に、上司からかけられた『働ける時間が限られているなら、時間をかけるべきコトと人に任せられるコト、思い切ってやめるコトをしっかり見極めなさい』という言葉が胸に刺さりました。プロジェクトを遂行するうえで、『各部門に説明して理解を得る段階や役員への報告には時間をかけても、実行段階では各部門に任せられる部分は任せきる。自分のやるべきことをしっかり理解していれば、それが可能だ』と言われたんです。それまでは『全部自分でやらなくては』と思い込んでいたので、大きな発想転換になりましたね」
「今でいう“育ボス”タイプの上司は、自らも育児経験があり、こどもの体調不良による急な欠勤にも快く対応してくれて、心理的な安心感がありました。そして、なにより尊敬できたのが、『家庭の事情は理解するが、出すべきアウトプットは決して譲らない』という仕事に対する姿勢でした。必要なサポートはしても甘えさせず成果は求める、という上司の対応に『期待されている』という喜びがありました」
「また、メンバーで協力することの大切さにもあらためて気づかされました。こどもが高熱を出してしまい、プロジェクトの最終報告会という重要な場に同席できず、物足りなさを感じたこともありましたが、『私個人の“やり遂げた感”よりもチームとして“目的を達成できた”ことが重要』という視点に切り替えられた時に、何か一つ乗り越えられたと感じました」
何もかもを自分でやるのではなく、うまく人を巻き込みながらチームで事を進めれば、たとえ自分の時間が十分になくても仕事がやり遂げられるとわかった瞬間。迷惑を掛けた分は別の場面で「恩返し」すればいい。その経験から、仕事がどんどん楽しくなってきたという。「この “人に任せる” “チームで考える”という視点は、管理職になった今もマネジメントとして役に立っています」
2度の育休復帰を経て
どんどん増す仕事のおもしろみ
2人目の育休時は気持ちに余裕ができ、会社の通信教育で「ロジカルシンキング」を勉強。復帰後は、またもや仕事が変わり、「仕事と育児の両立支援」というプロジェクトを担当することになったが、自らの経験を活かし、常に新しいことにチャレンジできる環境で、仕事はどんどんおもしろくなっていったという。
「こどもが2人になると保育園からの呼び出しも2倍になるのでは?と不安でしたが、実際はすべて「たられば」の取り越し苦労。長男と長女を別々の場所に送迎する物理的大変さはあるものの、パートナーは料理も家事もでき、お迎えも週1~2回担当してくれるし、夫婦で仕事も育児も頑張っている実感があります。今では、こどもも家事を分担しています。でも、仕事のおもしろさと引き換えに、平日こどもと過ごせる時間はわずか2時間半ほど。今でもこれでよかったのかなと考えることはあります。でも、私も夫も仕事のおもしろみをこどもたちに話すようにしていたら、こどもたちも仕事は『楽しいもの』と捉えてくれるようになったんです。私が働いていることを学校で誇らしげに発表したり、大人になったら自分たちのように働きたいとも言ってくれたりしていることがうれしいです」
通算5年間「短時間勤務」で働き、こどもが6歳と2歳の時にフルタイム勤務(フレックス制)に戻すことに。「時短」をしている後ろめたさがなくなり、解き放たれたように気持ちがラクになったという。「定時後に雑談できる空気感までありがたいと感じました。フルタイムになっても常に時間がなく忙しいのは変わりませんが、だからこそ、話しかけられた時にあえてゆったり返事をするくらいがいいのかな」と、“育児で忙しいオーラ”は職場厳禁と心がけているそう。
2015年に基幹職(管理職)に昇進。「期待されているのは嬉しかったのですが、こどももまだ小さかった(当時小2と4歳)ので、最初は不安でした。でも、やりがいを持って挑戦した仕事で成果が出せれば、結果としてさらなる昇進につながると捉え、今は、働くかぎりは成長し続けたいと思っています」
現在は、ダイバーシティ推進グループの課長として、女性・ベテラン層・若手の活躍推進や人事制度改革に取り組んでいる今西さん。プロジェクトごとに役職や年齢の異なるメンバーと仕事ができ刺激的で、難しいテーマを、メンバーたちと相談しながら進めていくことがおもしろいという。「こどもを産んでからの方が、仕事は楽しくなりました。でも、仕事も育児もどちらも大切にしたいので、課長になった今もなるべく時間の効率を意識して、残業しないよう心掛けています。『バリキャリ』よりも、ほんわか系で成果を上げる管理職を目指したいです(笑)。『残業しない女性管理職第1号』になれればいいですね」

今西さんの ある1日
(2人目のこどもが保育園児の頃/現在の変更点は()内に記載)


6:00 起床 → 家事、身支度
6:30 子どもが起床 → 朝食、身支度
6:50 夫が出勤 (現在、6:40に出勤)
7:30 長男が登校、長女を保育園へ送る
(現在、子どもの登校時に一緒に出勤)
通勤中に仕事の段取りを考え、新聞に目を通す
9:00 仕事開始
17:30~18:30 退社
19:00~19:30 夫婦どちらかが長男と長女のお迎え
(現在、夫婦どちらかが学童へ長女のお迎え)
20:00 夕食
(現在、長男が塾や習い事から帰宅→夕食)
21:00 入浴
22:00 寝かしつけ(現在、こども就寝) → 家事をしてから就寝

文/西川由紀子 撮影/スタジオエレニッシュ 岸 隆子