2018.6.26

WorMo’的ワークスタイル

制度で縛らずオーダーメイドの働き方を共創

スタートアップ企業に求められる女性活躍支援


女性向け月額制ファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」を展開する株式会社エアークローゼットは、2014年創業のスタートアップ企業だ。正社員の半数は女性であり、業務委託で働くスタイリストも9割は女性が占める。女性は出産などのライフイベントに応じて働き方の変更を迫られやすい面もあるが、企業としてはどのような体制で支援を行っていくのか。代表取締役社長兼CEOの天沼聰氏に、女性がキャリアを描くために同社が行っている施策や、活躍支援に対する考え方をお聞きした。

できるだけ同じ空間で働き
温度感を共有
 まず正社員の働き方は、「同じ空気感を共有する」が基本スタンスだ。コアタイムはできるだけ全社員がオンサイトで働き、リモートワークはなし。毎週の全社会議にも、基本的には全員参加が求められる。
「例えばシステム上のエラーが見つかって業務がストップしてしまったとき、リモートワークをしている社員にはその緊急度が伝わりづらいことが考えられます。逆によいことがあったときも、同じ場にいないと喜びを共有するのが少し難しくなります。その積み重ねが社員間の温度差となって現れるのがこわいので、同じ空間で働くことにはこだわっています」
 これまでは男女ともシングルの社員が多かったこともあり、「同じ空間」にこだわったワークスタイルで特に問題はなかったという。
社員の事情に合わせて
働き方を相談しながらつくる
 しかし創業3年目あたりから、子育てのため時短勤務をしたり、介護のため一部リモートワークで働く社員も出てきている。また、物流拠点のある千葉県市川市に常駐する社員もいる。そうなると、「コアタイムあり、全社会議に全員出席」のスタイルは難しくなっていくのではないだろうか。
「確かに今後は、リモートワークをさらに拡大したり、全社会議にリモートで参加してもらったりといったことも出てくるかもしれません。特に育児や介護などの事情に関しては、柔軟に対応していきます。弊社は設立4年目で固定の福利厚生制度がなく、私が社員一人ひとりと話をして、働き方を決めています。物理的な制約はあっても、エアークローゼットで働きたいという意思をもってくれるなら会社は全力でサポートしていく、というのが基本姿勢です」
 いわば一人ひとりの社員とオーダーメイドの福利厚生メニューをつくっているということだ。今後は制度設計も考えているというが、「あくまでも『社員が幸せに働くための制度』をつくりたい」と天沼氏は答える。すでに、メンバーのファッション意識を高めるための「ファッション手当」など独自の制度も考えているという。
 制度もさることながら、大切にしているのは「時間的制約の中で働いていても、成果を出しているなら胸を張っていい」という土壌づくりだ。その一環として、スタイリストルームと正社員が働く執務スペースをガラス1枚で隔てて見えるようにし、時短で働く社員がほかの社員より早い時間に退社しやすい雰囲気をつくっている。スタイリストは基本的に都合に合わせた時間の中でシフトを組み出退社できるため、夕方になると保育園にこどもを迎えに行くため退社する人が多い。スタイリストの帰宅の流れに乗って退社することで、時短勤務の正社員にとっても「ほかの社員より先に帰るのは悪い」という負担感が減ると考えられる。
「どんなにユニークな制度があっても、使いにくい雰囲気があって活用されないのでは意味がありません。まずは『意欲さえあれば多様な働き方ができる』という意識を社員間に浸透させることが大切だと考えています」
スタイリストの働き方に
バリエーションを提案
 同社の大きなアピールポイントとして挙げられるのが、顧客一人ひとりのためにプロのスタイリストがアイテムを選定する「パーソナルスタイリング」のシステムだ。スタイリングを行っているのは、業務委託で働く約150名のスタイリスト。エアークローゼット本社には常時開放されているスタイリストルームがあり、都合のよい日時に来社して働くスタッフもみられる。常時20~30名が集まるこの空間は、フリーランスのスタイリスト同士が仕事の合間に情報交換を行い、刺激し合える場ともなっているようだ。
 しかし、多くのスタッフは、社外での別の仕事現場や、自宅などで家事や介護をしながらリモートワークを行っている。なかには海外で仕事をするスタッフもみられる。アイテムの選定やコーディネートはパソコン上で行うため、あえて出社して働く必要がないからだ。ほかの仕事との兼業も可能で、実際にテレビや雑誌のスタイリストとしても活動する人が多い。
 このようにフリースタイルの働き方を提案する理由について、天沼氏は次のように話す。
「スタイリストという職種は、高いスキルが求められる専門職です。しかし、力仕事が多かったり時間が不規則だったりして、特にメディアで活躍する女性スタイリストの場合は、マタニティ期に早くから休まなければならなかったり、出産後も育児と両立しづらかったりと、働き方のバリエーションが少ない面がありました。そこで、新しい働き方がないかと考えた結果、育児や介護とも両立しやすい現在のような働き方を提案しています」
IT研修でスキルを補てんし
行動指針の説明でマインドを共有
 求人応募してくるスタイリストの多くは、パソコン上でアイテムの選定やコーディネートを行うスタイリングは未経験だ。また、必ずしもITリテラシーが高い人ばかりでもない。しかし、登録前に独自の教育プログラムで一通りのスキルをつけられるうえ、リモートワーク中に迷ったことなどは本社の担当者に相談できるので、スタイリストからは不安の声が挙がることはないという。
 IT研修だけでなく、業務委託ではあってもカンパニーコンセプトや行動指針の共有も行われている。採用時には天沼氏が基本的に全員と面接を行い、エアークローゼットの行動指針である「9Hearts」についても説明し、共感したスタイリストを採用しているのだ。
「あえてスタイリストルームのそばを通ってあいさつしたり、立食パーティーを開いたりして、ご来社いただけるスタイリストさんとはできるだけコミュニケーションをとるようにしています。私たちのビジョンをスタイリストさんにも知ってもらうことで、お客さまがもっとワクワクするサービスをお届けできると期待しています」
 ユーザーとスタイリストがより近い距離感でコミュニケーションが取れる工夫や機会創出なども考えているという。さらに、「プロフェッショナルのスタイリスト集団」という特異性に注目し、他事業者からエアークローゼットにスタイリング依頼が寄せられるケースも出てきている。
「今後はさらに幅広い働き方をご紹介し、キャリアの一端をつくるお手伝いができればと考えています。まだ構想段階ですが、福利厚生の面でも何らかの保険適用ができるよう制度を拡げていくことも考えています」
女性の強みを生かし弱みを
補うマネジメントを意識
 最後に、同社で働く女性を見ていて感じる強みと弱みについてお聞きした。まず圧倒的な強みは、「パラレル思考ができること」だという。
「私は特に複数のことを同時に実行していくのが苦手で、家でたまにパスタをつくるときも、お湯が沸くのをじっと待っていて妻に笑われます(笑)。女性社員やスタイリストさんを見ていると、マルチタスクの進め方が本当にスムーズで、男性とは脳の構造が違うんだな、と感心します」
 一方、その強みは時として弱みになることも。複数の課題に頭が行くため一つの業務にパワーを集中できず、スピードやクオリティーが下がってしまう場合もあるというのだ。
「例えばPRチームには、プロモーションと広報を担ってもらっていますが、プロモーションも広報も仕事の内容が多様です。女性社員はどちらかというと捨てていくのが苦手で同時にすべてを進めようとする傾向があり、そうなると結局どの業務も実現が遅くなってしまいます。そこはマネジメント側が、『今はPRに集中しよう』などと道筋を示すことが大切です」
 また、目の前の課題を解決していく力はあるが、大きなキャリアビジョンを描く力が少し弱いと感じることもあるという。
「全社員と定期的に面談を行っているのですが、女性社員に将来の夢について尋ねると、あまり明確でない場合も見受けられます。そこで、ふわっとした夢を語るメンバーには、『本当は何を実現したいの?』と問いかけ、一緒に掘り下げます。私は『働く=人生の中で人として成長する』ことだと考えているので、成長できているかどうかを一人ひとりが考える機会を定期的につくっています」
 歴史と伝統に支えられた大企業では、「前例がないから」という理由で、意欲ある社員の働き方が制限されてしまう場合もある。社員や業務委託スタッフが自由にキャリアを描くための土壌や制度を一つずつ構築できるのは、スタートアップ企業の強みといえるだろう。

株式会社エアークローゼット

“新しいライフスタイルをつくる”を理念に株式会社ノイエジークとして2014年設立(2015年に「株式会社エアークローゼット」に商号変更)。2015年2月に女性向けファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」の提供を開始し、現在は登録会員数15万人に。法人向けプランや、パソナキャリアカンパニーと提携した「入社お祝いキャンペーン」などの『airCloset』を通して幅広い展開をしている。

文/横堀夏代 撮影/ヤマグチイッキ