2017.6.5

WorMo’的ワークスタイル

2020年までに女性社員を1000名に!

kmタクシー、女性活躍推進への挑戦

男性社会のイメージが根強いタクシー業界。とくにタクシードライバーは男性が多く、女性ドライバーは全体の2%にも満たない。そのような状況のなか、女性ドライバーの採用・育成に積極的に取り組み、注目を集めているのが、国際自動車(kmタクシー)。2015年はリクナビNEXTの「第2回グッド・アクション」の女性活躍促進部門を受賞し、2016年は国土交通省の『女性ドライバー応援企業』に全国で初めて認定された。具体的な取り組みや成果について、執行役員・人財採用研修担当の川田政さんに伺った。

女性ドライバーの秘めた力に注目し、
積極採用に踏みきる
管理職は男性のみ、女性社員は一般職、タクシードライバーは男性…。かつてのkmタクシーは、タクシー業界の例に漏れず、男性中心の企業だった。2000年を過ぎる頃からわずかながら女性ドライバーが増え、営業所内に女性用のロッカーやシャワーなどを整備したが、積極的な採用は行わなかった。女性社員は扱いにくいと、男性管理職が採用に消極的だったのだ。
2008年からは女性の総合職採用を開始。女性社員の存在感が増し、少しずつ社内の雰囲気が変わっていくなかで、女性ドライバーの活躍ぶりに注目する声が上がった。
「女性ドライバーは、人数は少ないものの売り上げを伸ばしている人が多いことに気づき、彼女たちにヒアリングをしました。そこで見えてきたのが、きめ細やかなサービスやホスピタリティで、お客さまの満足度が高いということでした。とくに女性や高齢のお客さまからは、女性ドライバーだと安心だという声をいただいていました。『お客さまの約半分は女性なのだからニーズは高い、ドライバー不足解消のためにも女性ドライバーを積極的に採用していこう』ということになったのです」
女性ドライバーへのヒアリングからは、現状への不満や要望も明らかになった。女性用の施設・設備を改修してほしい、女性の管理職がほしい…。募り募った募った思いがあったのか、涙ながらに2時間も話し続けたドライバーもいたという。ヒアリングの結果を受け、女性が働きやすい職場環境をつくろうと、2013年にトップの号令で「女性が働きやすい会社をつくるプロジェクト」が誕生。第一弾として、各営業所の女性用施設・設備を整備した。2014年には、2020年までに女性社員を1000名(うち680名はタクシードライバー)に増やすことを目指し、「kmウーマンプロジェクト1000」と改称。本格的な取り組みが始動した。
求職者に女性ドライバーの声を届け、
実態や魅力をアピールする
まず取り組んだのが、タクシードライバーという職業へのイメージと実態とのギャップを解消することだった。とくに女性が不安を感じるのが、防犯・安全面、そして世間の目。そうした求職者の不安を受け止め、安心と信頼につなげようと、会社説明会や求人サイトでの訴求に加えて女性専用の採用ホームページを作成し、情報を発信した。
「“タクシードライバー=女性の仕事ではない”というイメージを払拭するため、弊社で活躍している女性ドライバーの声を発信していきました。会社説明会の会場で話をしてもらったり、ホームページにインタビュー記事を掲載したり。求職者に気軽に来てもらうために、説明会にも工夫を凝らし、青山のおしゃれなベーカリーカフェでの“カフェ説”や、女性のみでランチやお茶をしながら話す“女子説”などを開催しました。また、新卒採用にも力を入れ、本人や家族に会社に来て見てもらう“オープンカンパニー”を開催しています。ご家族からは、『タクシー会社やタクシードライバーの仕事へのイメージが180度変わった』、という声をいただいています」
“カフェ説”がきっかけで入社した社員や新入社員の女性ドライバーなど、取り組みが功を奏して女性ドライバーの数は年々増加している。プロジェクトが始動した2014年には97名だった女性ドライバーは、現在160名を超えた。ドライバーを束ねる女性の班長も、1名から7名へと大きく増えた。また、全社の女性社員数も400名を超え、2015年には初の女性管理職が誕生し、現在では3名に増えた。「2020年までに1000名」の目標達成にはまだ遠いが、着実に歩みを進めている。
委員会活動、研修、運送約款改定…
女性が安心して働ける環境が着々と整う
社外に向けての発信と並行して、社内でもさまざまな取り組みが進められている。昨年10月には、「kmウーマンプロジェクト1000」内に「制度見せ方委員会」「制服改善委員会」「キャリアプラン研修委員会」の3つの委員会が発足した。「制度見せ方委員会」では、結婚、妊娠、出産、育児などに関わる制度を周知し、手続きの方法や休暇の取得などをわかりやすく記載した、ガイドブックを作成している。また、「制服改善委員会」は制服への不満や要望をヒアリングしており、今後会社に提案する予定だ。さらに、「キャリアプラン研修委員会」は、会社で働く女性社員のキャリアアップに必要とされる研修や学びたいスキルをヒアリングし、これまでになかった研修の提案を予定している。いずれの委員会も男性社員の参加を促し、男性目線の意見も取り入れている。立ち上がってからまだ日が浅いが、今後はさらに活発に活動していく予定だ。
女性社員だけでなく、男性社員へのフォローも行っている。例えば、ある管理職向けの研修では、男女の脳の仕組みの違いから、女性に伝わりやすい声のかけ方やコミュニケーションのとり方、男性に適した伝え方などを学んだ。「女性社員とどう接すればいいかわからず困惑していた管理職の社員にとっては、学ぶことの多い内容だったようです」と自らも参加した川田さんは言う。
さらに、タクシー車内での乗客によるセクシュアルハラスメントやモラルハラスメント行為からドライバーを守るため、他社に先駆けて運輸約款を改定した。女性ドライバーが安心して働ける環境は、こうして着々と整っている。
タクシードライバーの仕事には、
女性が働きやすい条件がそろっている!?
「女性ドライバーや女性社員が増えたことで、何よりも社内が明るくなった」と川田さん。女性の視線があることで男性も身なりに気をつけるようになったり、バレンタインなどの季節のイベントで社内コミュニケーションが活発になったりと、職場の雰囲気は大きく変わった。
また、介護職員初任者研修や救命講習を修了した女性ドライバー(ホスピタリティ・アテンダント)による高齢者の病院送迎や買い物介助などのサービス、こどもの習い事や妊産婦の送迎などを行うサービスも展開。kmタクシーでは女性ドライバーの活躍の場が広がっている。
一方で、課題もある。女性ドライバーが妊娠した際の勤務配置替えやサポート体制、子育てをしながら働けるような時短勤務制度や託児所の整備など、他業界と比べると遅れている部分も多い。実際、未就学児を育てながらドライバーを務めている女性はまだいない。
「タクシードライバーは勤務体系も給与も安定していて残業もなく、女性が働きやすい条件が整っています。今後の課題は、子育て世代をどうサポートするか。タクシーに限らず運輸業界は人材の奪い合い状態が続いていますので、今後も継続してより魅力あるタクシー会社を目指し、多くの女性ドライバーが活躍できる土壌をつくっていきたいと思います」
タクシー業界の女性活躍推進を牽引するkmタクシー。その挑戦は、これからも続く。

国際自動車グループ(kmタクシー)

タクシー・ハイヤー・バス事業などを手がる、東京最大手の旅客運送事業総合企業。2020年に迎える創業100周年に向け、人財育成とホスピタリティ・ドライビングの実現に力を入れる。

文/笹原風花 撮影/石河正武