2016.11.22

WorMo’的ワークスタイル

社員自身が構築する理想の働く環境とは?

ワークスアプリケーションズの女性活躍支援

2016年12月、人工知能搭載のパッケージソフトなどで知られる株式会社ワークスアプリケーションズが、自社運営の企業内託児スペース「WithKids」を開設する。今回の託児スペースに限らず、同社ではかねてから、女性の活躍推進を支える目的で、働き続けられる環境の構築に力を入れてきた。同社が実践する出産・育児支援体制について、経営企画部門の牛丸侑香里さんにお聞きした。

社員有志が練り上げた
出産育児支援制度の理想形
株式会社ワークスアプリケーションズでは、創業間もない時期から出産・育児支援制度を整備し、社員の活躍推進をバックアップしてきた。女性はもちろん、男性も中長期の育児休業を取得するケースが珍しくないという。こうした支援制度の一つとして2004年につくられたのが、同社の女性社員を対象とした出産・育児支援制度「ワークスミルククラブ」だった。
同社では、業務に関することのみならず、労働環境、日々思うことや悩みなどまで、疑問や要望を業務報告書に書き、代表取締役最高責任者である牧野正幸氏に訴えることができる。この仕組みを利用し、出産を控えていた女性社員が「出産や育児に関する制度は、一体どうなっているんですか?」と質問したところ、牧野CEOから「自分たちで理想の制度をつくってみてはどうか」と逆提案されたという。そこで、有志の社員が集まってつくられたのがワークスミルククラブだ。
ワークスミルククラブの内容をざっと見るだけでも、「妊娠判明時から、こどもが3歳に達した後の3月末まで育児休業の延長が可能」「こどもが小学校を卒業するまで選択できる短時間勤務制」など、女性がキャリアを継続する上でさまざまな支援が受けられることがわかる。牧野CEOの提案で、年俸の15%にあたる職場復帰特別ボーナスの支給という項目が組み込まれているのも特徴的だ。
しかし、このようなサポート内容は初めからスムーズに決まったわけではなかった。経営企画部門に所属し、職場環境の改善や組織活性化に取り組む牛丸さんは、ワークスミルククラブの制度が完成するまでの経緯について次のように語る。
「実を言うと、最初に提出された支援体制案は、一度却下されています。というのは、設立メンバーたちはまずさまざまな会社の育児支援体制を参考に約半年ほどかけて素案をつくったのですが、その時の牧野からのフィードバックはとてもシンプルで『これで本当に、100%戻ってくるんだな?』というもの。本人たちも気づかぬうちに、他の制度とのバランスや会社に対しての遠慮をしてしまっていたのか、その問いにうまく答えられなかったといいます。そこで改めてメンバーたちは、今まで考えてきた枠をいったん取り払い、自分たちが本当はどんなサポートを求めているのかを再検討しました」
こうして何度も何度も議論を重ね、ワークスミルククラブの制度は完成した。社員数の増加に伴い対象社員の枠を拡げるなどのマイナーチェンジは行っているが、制度開始の段階で一つの理想形を創り上げることができたため、内容自体は当初からほとんど変わっていないそうだ。
牛丸さんも、ワークスミルククラブの制度を活用する社員の一人。出産後に2年間の育児休業を経て復職している。 「産休や育休の制度自体はあっても、1年以内に職場復帰をしなければいけなかったり、こどもの就学後は時短勤務が認められていないなど、企業によっては出産後の女性が活躍しにくい環境もあるかと思います。そんななかで、ワークスミルククラブでは、育休も延長できるうえ、こどもが小学校を卒業するまで時短で働くことができます。このようなサポート体制が整っているおかけで、私も安心して復職できました。要は、選択肢があることが重要なのだと思います。同じように考える人は多いようで、条件が合わずに復職をあきらめる女性社員は見受けられません」
現在は時短で働いている牛丸さん。時短勤務中は「キャリアアップは一段落」といったイメージがつきまとうが、同社においては当てはまらないという。なぜなら労働時間ではなく、仕事の質で評価が決まるため、働く時間が短いことは大きなマイナス材料にはならないのだ。
「時短勤務をしていても役職に就いて活躍する女性は多く、私も復職直後から、企業内託児スペースの企画リーダーを務めています。そもそも時短といっても、出社と退社の時刻が決まっているだけで、それ以外の面では出産前と同じ働き方をしています。また、弊社はフレックス制をとっていて、労働時間の長短ではなく、自己マネジメントによって働くスタンスが根付いているので、働きやすさにつながっています。『自分だけが早く抜ける』といった負担感がないのは大きいですね」
社員全員でこどもを育てる
「会社保育」を実践
企業内託児スペース「WithKids」のプロジェクトも、「ダイバーシティのある働き方を推進するために、社内に託児施設をつくったらどうか」という牧野CEOの提案から始まった。ワークスミルククラブと同じく、今回も有志の社員50名程度が集まって検討が行われ、現在は牛丸さんはじめ10名弱の社員が立ち上げに携わっている。
企業内の託児施設は近年増えているが、「WithKids」は自社運営である点が特徴的だ。
「企画当初は、外部の保育サービス業に委託しようと考えていました。でも、依頼候補先の業社を選定するなかで、委託という形だとどうしても提供サービスの枠に制約が生まれ、私たちが理想とする育児環境を実現するのが難しいことに気づいたのです。そこで、思い切って自社運営に踏み切りました」と牛丸さん。
では、同社が理想と考える保育とは具体的にどのようなものなのか。その一例として、牛丸さんは一時保育の受け容れ体制を挙げて説明する。
「地域の保育園では、一時保育の申し込みを前日で〆切るところが多いようです。そのため、『仕事で突発的な事態が起こっても、一時保育を予約していないからこどもを預けられずに困った』という声をよく聞きます。そこで『WithKids』においては、当日でも預けられるサービスはぜひとも実現したいポイントでした。
また、“いつも一緒”をコンセプトに、親子で食事ができるようにしたのもこだわったポイントです。調理施設も整え、こどもにとっての「おばあちゃんがつくるおいしいごはん」を目指して食事はすべてスタッフの手作りです。夕食も提供することで、ワーママの負担を減らしたいという思いもありますし、親子で会話をしながら楽しくごはんを食べられるという環境は、女性社員のよりよい働き方や子育ての実現に向けたこだわりです。さらに午前8時から午後8時30分と保育時間を長めに設定することで、たとえば通勤ラッシュを避けて遅めに出社し、夕食をこどもと一緒に食べて帰るというスタイルもできると考えています」
女性が職場復帰する際に、ネックになりやすいのが“時間”の壁。しかし、保育時間に融通を利かせることで、働き方に新たな拡がりが期待できそうだ。
牛丸さんらがこだわったもう一つのポイントは、「社員全員でこどもを育てる会社保育」というコンセプトだった。「かつては地域全体でこどもを育てるのが一般的でしたが、現在は地域のつながりが薄くなってきている現状があります。育児環境の一端を、弊社で担えればと考えています」と牛丸さんは語る。
具体的には、社員が自分の趣味や特技を活かしてこども向けにワークショップを行ったり、外国人社員が語学教室を開催するなど、保護者以外の社員が保育に関わる企画を予定しているという。また、ママ・パパ研修会や子育て相談なども開催し、ワークスアプリケーションズという共通の土壌を持つ保護者たちのコミュニティー構築も支援していく。なお、託児スペースで働く保育スタッフや調理スタッフ、看護スタッフも「一緒にWithKidsを創り上げる仲間」ととらえ、社員として迎え入れるそうだ。
同社の事例のように、個人の働き方や育児ニーズに適応する柔軟な育児環境の整備が進めば、仕事にも子育てにもやりがいをもって取り組む女性はますます増えるだろう。

株式会社ワークスアプリケーションズ

人工知能を搭載した大手企業向けERPパッケージソフト「HUE」の開発・販売・サポートなどを手がけ、ERPパッケージソフトの国内シェアナンバーワンを誇る。「クリティカル(ロジカル+クリエイティブ)ワーカーに活躍の場を」を企業理念に掲げ、創業時から人材開発・育成にこだわっているのも特徴。一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境整備に力を入れ、Great Place to Work® Institute主催の「働きがいのある会社」ランキングでは、アジア9カ国940社以上のなかからベストカンパニー賞を受賞している。


WithKids

株式会社ワークスアプリケーションズの自社運営による社内託児スペース。ワークスグループの社員なら、育児休業中の社員や男性社員も利用できる。月極保育のほか、当日でも申し込める一時保育も実施する。

文/横堀夏代 撮影/曳野若菜